象
江戸時代後期、江戸神田の粉屋に生まれた石塚豊芥子(1799-1861)は、古書の収集に精出し、山東京伝ら当時の売れっ子作家と付き合う文人だった。 文化10年(1813)年に長崎の出島に到着した象に関心を持ち、100年ほど前の享保年間に渡来した象…
明代・北京の象について触れ、賓客を迎える象は、どこで飼われていたのか、不明と書いたままだった。 象を飼育する「象房」というものがあって、その頃は、北京の宣武門内に作られていたのだった。宣武門は北京の内城の西南部にあり、その門内にある定力院に…
象のノート(11) しばらく、象のメモを書き留めてきたが、いささか、疲れてきた。 もう打ち止めにしようと思ったが、モンゴル相撲の「象」について触れておかねば。 モンゴル相撲には、強者の称号がある。最高位から順に 「アヴァルガ」 「アルスラン」(…
象のノート(10) 江戸時代の山王祭で白い象の作り物が登場したことを、久生十蘭の「平賀源内捕物帳・山王祭の大象」(1940)を読んで知った。 神田祭並みの大祭だった日枝神社の山王祭は、神田祭と隔年開催で幕府の肝いりで始まった。祭礼は6月15日。各町…
象のノート(9) 台風21号が去った。鉄道ダイヤが乱れ、台風一過、超満員電車に乗って出勤した。今度の台風で初めて気づいたのは、21号に「LAN」という名がついていたこと。 けげんに思って調べるとー。 ハリケーンにイルマなど名が付いているように…
象ノート(8) 現代京ことば訳の「源氏物語」(中井和子訳)があるのを知って、第1巻から読み出したところ、末摘花の巻に「象」のことが出てきた。 ひっそりとわび住まいの姫君に興味を持った光源氏が、幾度か通い、やっと姫の姿を目にする場面。座高が高…
象のノート(7) 「ジャングルブック」の児童小説で知られる英国の詩人、小説家のキップリング(1865-1936)は、ノーベル文学賞の受賞者でもある。英国統治下のインド、ムンバイで生まれ、ロンドンで少年時代を過ごした後、インドの新聞記者としてアジア(日…
象のノート(6) 毎週会う英国のスチュワートさんは、小さなダイヤル錠を持っている。昨夜別れる時に、「よく見えないので、数字をあわせてくれませんか」とダイヤル錠を渡された。 000とゼロが縦に3つ並んでいた。 数字を合わせたつもりで、真鍮のツル…
象のノート(5) 「ぞうのババール」という子ども向けの絵本がある。僕はフランスの作曲家プーランクの曲「小象ババールの物語」(45年)から、この絵本にたどり着いた。 1931年フランスの絵本作家ジャン・ド・ブリュノフが、象のキャラクターの絵本…
象のノート(4) 平安時代の象に触れたが、日本に象の絵が伝わったのはもっと前、古墳時代に遡る。 この絵は、京都府朝来市和田山にある円墳「城ノ山古墳」出土の三角縁神獣鏡の模様の一部。出土した6面のうち、2面に象が鋳られていて、魚、蛙、鼈、鳥、…
象のノート(3) 神社仏閣の柱上部に、象の彫り物があるとなんだかうれしくなる。「象鼻」という。同じような彫刻物でも、獅子や獏は、装飾性が強すぎる。 象鼻が生まれたきっかけは、鎌倉時代の東大寺再建。中国・宋の建築様式が移入されたためだ。「大仏…
象のノート(2) 明代、北京の紫禁城正面に象が並ぶ銅版画があって、初めて見たときから気になっている。 メンデス・ピントー「アジア放浪記」(江上波夫訳、昭和30年、河出書房)の挿絵で、午門に向かって賓客が進み、左側に、乗って来たと思しき象車の…
象のノート (1) 将棋に「酔象」という駒があった。この駒が前々から、気になっている。酔象といっても、酔った象でなく、興奮したオスの象と解釈されている。 日本で平安時代から行われてきた駒の多い「大将棋」などのほか、現在と同じ「小将棋」でも酔象…
息子夫婦がやってきて、動物園の土産をくれた。変わったノート。なにかあるな、と思ったら象のウンチで作ったノートだった。 売上げを象の保護などに使っているらしい。スリランカ製だった。 調べてみると、象のウンチで紙を作る試みは、ケニアで始まったよ…