神田界隈

古本に挟まっていたカラヤン公演の名残

昼すぎ事務所を出て、神田神保町あたりを散策する。街は女子高生、大学生、本探しの高齢者、そして海外からの観光客で賑わいが回復しつつある。古レコード店の御主人も何年かぶりに雑貨の仕入れにネパールへ出かけ、戻ってきた。 古本街の店外に置かれている…

70歳の白箸翁と深草の土器翁

事務所近くの理髪店は主人を入れて3人が働いて居る。客としては、誰に当たるかで、若干髪型が違ってくる。3人のうち、ひと月位経っても、髪型が崩れないのが唯一人の女性理髪師だ。 今回店に行くと、その女性がおらず2人で回していた。主人は「病院へ検査…

ヨネ少年の1882年彗星体験

通勤帰り、駅を降りて休日の料理のために買物をして帰ろうと、ビルとビルをつなぐ歩道橋を行くと、東南の空にスマホを掲げる老若男女の混雑に出くわした。 月蝕をスマホで撮影しているのだった。月全体が薄暗くなって、右下に小さな三日月型が輝くだけになっ…

角力俳句と高田屋の俳人たち

天明の俳人、高井几董について触れてきたが、代表句は、勝った後の相撲力士を描いた次の句だろう。 やはらかに人わけゆくや勝角力 以前、神保町交差点近くの中華料理店で食事をしていた夜、ふれ太鼓が店内に入って来たことがあった。 太鼓を叩いた後、明日、…

住吉で出会った天明の2俳人

林業に詳しい人物から、江戸時代江戸の町は大火事が多かったので、江戸の再建に大量の木材が必要だった、そのため幕府は奥多摩の森林資源と秩父方面の森林資源の2地域を確保していた、と聞いた記憶がある。 奥多摩地区で100年間伐採、その後は秩父で10…

天青堂と「栗山」印

神田小川町で仕事するようになって6年ほど経った。幾つかの神保町界隈の古本、古レコード店、小川町周辺の飲食店、和菓子店に通って、馴染みになったのが、なにより嬉しい。気心が知れてくると、お互い掛け値なしで普段着で話が出来るようになる。 そして、…

とみ・とらんの「狼」印「狽」印

「サン」「ロク」「イチ」 真夜中に合成音声がリビングに鳴り響く。我が家の猫が、私たちを起こそうと電話機の上に飛び乗って、番号ボタンを踏んで押すのだ。 「タダイマ留守ニシテオリマス」という大きな音も聞こえる。どこを踏んだのだろう。 それでもこち…

マチスの狛犬について

猫のいる古レコード店にまた出直して、買い物をしたが、レコードもストラヴィンスキーの「夜鳴きうぐいす」(Le Rossignol)など買って帰った。 アンデルセンの原作を元に、ストラヴィンスキーが作曲した3幕の短いオペラだ。 LPのジャケットに…

知人の庭の猫と花

休日に、家族で知人の珈琲店へランチを食べに行った。奥武蔵の山並みが間近で、空気もいいので、気持ちがいい。 孫娘もつれていく。冬以外は庭に花が咲き乱れているので、花摘みを楽しみにしているのだ。私は、駐車場の横で、ホオズキを見つけてひとつ摘み、…

猫用にショールを購入した

コロナ自粛が緩和されてから初めて、神保町の猫の古レコード店に顔を出した。 少しずつ、お客さんが戻って来たという。猫は奥の棚の中でじっとしていたが、呼ぶと出てきた。撫でられるのが好きな猫なので、しばらく撫でて過ごした。 主人によると、コロナ自…

女帝たちと法相宗、華厳宗

休みの日に、孫娘を預かることが増えた。私の部屋が気に入って、部屋にある物を弄りまわす。 朱肉と黒スタンプで手を汚しながら十種類の印鑑を押しまくり、旅先で拾った石や、外国コインを瓶や箱からベッドにぶちまけては、また戻して楽しんでいる。ネクタイ…

ヨーロピアンスタイルの役行者

人間に抱かれるのを断固拒否する我が家の猫も、淋しいのか、ベッドに上がって来て、身体を私の脚にくっつけてくるようになった。 猫が寝ている間に、手に余って来た「弥勒仏」について、フィニッシュを目指して考え続けてみた。 十三重塔から、始めてみる。…

帝王=弥勒説

猫を横目に、弥勒仏に就て気が済むまで、探索することにした。 インドから経典を運び、漢訳して弥勒信仰を中国に伝えたのが、「西遊記」でもおなじみの玄奘三蔵。玄奘は、中国法相宗の礎を築いたとされる。この教えは、「唯識」といわれる。 法相宗のことも…

法隆寺四仏浄土図の如来倚像

猫と一緒に、いろいろと歴史を調べていくと、過去の研究結果から定説とされているものが、ネット上や報道などで、まるで「絶対真実」であるかのように扱われている危うさに気づくことが多い。 私たちが学生の時に教科書で教えられた源頼朝、足利尊氏の画が、…

猫にジャマされ乍らなお弥勒仏を

古代の弥勒仏を調べ出すと、膨大な資料を読まないとならないことが分かった。せめて、要点を掴もうと試みると、早速邪魔が入った。 「一緒に遊んでくれ」と、猫がデモンストレーションを起こしたのだ。パソコンのキーボードの上に坐り込んでしまった。追い払…

八王子の仏像の薬壺

考古学者で、文化財調査でも業績を残した柴田常恵氏について、いままで度々触れてきたが、深大寺の「釈迦如来倚像」についても同氏が明治時代に撮影した写真資料を残していた。 WEBで「國學院大學学術フロンティア構想柴田常恵写真資料目録Ⅰ」の東京の部…

深大寺と深沙大王

深大寺に話が飛んでしまった。 同寺の白鳳仏「釈迦如来像」は、「弥勒仏像」ではないか、と中国唐代の大仏を調べて居て、行き当たったのだ。 「釈迦如来」として当寺で伝えられたのだが、釈迦如来の深い根拠はないようだ。 私は、深大寺に残るわずかなシルク…

唐代の巨大弥勒仏

唐代の楽山大仏をどこから理解していこう。坐り方から考えてみるか。 楽山大仏は、台座に腰かけていて、両脚は前に下ろしている。我々が椅子やベンチに腰かけている姿と同じだ。 この坐り方の仏像は、ガンダーラ地方で古く登場したことで知られる。アレクサ…

100年前の大仏写真

猫と一緒に、1908年発行の本を引っ張り出して、確かめてみる。 英国の女流作家アリシア・リトルが著した清の時代の中国紀行「In the Land of the Blue Gown」(Mrs. Archibald Little)。この本に掲載された巨大な石仏の写真を思い出して、開いてみたの…

埋もれているムクドリの才能

ムクドリの大群が、郊外の町でうるさい声をあげ、住民が迷惑していると報道があった。一度、郊外の駅前でムクドリに出くわしたことがあり、道に落ちているその糞の量にびっくりしたことがある。 その後、本を読んで、なんだかムクドリの扱われ方もかわいそう…

わが家のカウチ猫

夜10時ごろ、BSで岩合さんの猫歩きの番組(たいていが再放送)が始まる時間になると、猫のためにテレビをつけることがある。 猫番組が好きな、わが家の猫は、ほっておくと、1時間まるまる見ていることがある。 以前は、テレビに前足を押し付けて画面の…

ハッダの仏頭のこと

アフガニスタンは行ったことがないし、遠い存在だと思って居たら、我が家のテレビの前のチェストが、アフガニスタン製の家具のはずだ、と細が言い出した。 テーブル替わりに使っている。数十年も前に、近所に家具屋が出来たので覗きに行って、珍しいこのチェ…

1900年代のNY摩天楼

神保町で手に入れた古書に、図版を印刷するのでなく、白紙のページに貼り付けている体裁のものに出くわすことがある。 例えば、柳宗悦が発行した雑誌「工藝」(昭和14年2月号)。図版はみな、和紙に貼付されている。 絵の一枚一枚がなんだか、大切なもの…

神保町のネコとジネズミ

6月に入って、神保町の古書店街が店をあけたので、昼に散歩に出た。 緊急事態宣言下の5週間は、古書店が一斉休業。街は寂しいものだった。6月になって宣言は継続されたものの、緩和措置とやらで、休業解除を決めたようだった。 やっこ寿司に寄ってから、…

二千円札のおつり

神田の街は、緊急事態宣言で古本店がみな閉まっている。5月一杯、昼の散歩も味気ないものになる。 和菓子の老舗が開いていたので、生和菓子を買いに入った。5月の菓子のうち、あえて今回は柏餅、木の芽田楽は外し、藤、清流、岩根つつじ、落し文、卯の花、…

古本に挟まれた70数年前の履歴書

宣言解除で神田小川町は、急に人出が増えた。きょうは、事務所でのんびりしている。 先週は神保町を散策し、馴染みの古書店の100円本を覗き、大正13年発行の「江戸切支丹屋敷の史蹟」など3冊を択んだ。 戻ってみると「江戸切支丹屋敷の史蹟」に、2つ…

鞍馬山の領収書印

神田には、関東大震災直後に建てられた古い建築の居酒屋があり、昼を食べに行く。 高い天井の下、土間に据えられた大卓で、焼き魚などを食べる。 昼は静まり返っていることが多い。 コロナ自粛の前は、夜は酔客であふれ、店外に列が出来るほどだ。近くの蕎麦…

ピールチョコを買いに出て

細の誕生日だったので、好物のオレンジピールチョコを買いに、本郷三丁目まで。 ピールチョコといえば、今では本郷三原堂を頼りにしている。 「ジャンヌ」といって、ココアパウダー、ビターチョコと甘さを抑えた素材でオレンジピールを包んでいる。 このチョ…

田崎草雲と神田明神

仕事始め。昼休みに近所の中華店へ行く。若い主人が、元旦神田明神に参拝後、目撃した淡路町の交差点での自動車炎上事故の動画を見せてくれた。スタバの前で、火と煙が立ちのぼっていて、消防、警察が駆けつけている。報道もなく、知らない出来事だった。 店…

モーツアルトのチョコが置いてあった

事務所への来客の手土産のチョコが、机に置かれていた。 一個ずつ大そうな袋に詰められ、取り出すと箱はモーツアルト(1756-1791)の横顔。 裏返すとしかめっ面のヨハン・シュトラウス2世(1825-1899)だった。 箱にはドイツ語でゴールデ…