2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

柳亭種彦の「草より出でて」の考証

「武蔵野は月の入るべき山もなし草より出でて草にこそ入れ」 この歌は、和歌ではなく室町時代に作られた俳諧連歌ではないか、と江戸時代後期の戯作者柳亭種彦が鋭い指摘をしている。 「用捨箱」(天保12年、1841刊)という考証随筆集で「俳諧の句を狂…

月の出づべき山もなし 

遊びに来た3歳の孫娘と屋上で皆既月食を見た。双眼鏡でうまく月が見られなかったせいもあってか、飽きてしまい「かくれんぼしよう」といってぱたぱたと屋上を走り回る。月が全部隠れたと伝えると、「お月さんが可哀そう」といってまた走り出した。 皆既食は…

秋櫻子と川田順の「との曇り」

洋画家船川未乾が装幀した歌人川田順の歌集「山海経」(大正11年三版、東雲堂書店)をあらためて手にした。川田の大和路の歌を読んで、なにか似た世界を思い起こした。俳人水原秋櫻子の昭和初期の句だ。 秋篠寺 あきしのの南大門の樹(こ)の下は蛇も棲む…

なぞなぞを解いた芭蕉の句

「猫多羅天女」について書いた鳥翠台北茎についてもっと知りたいと思ったが、金沢の俳諧師であることしか分からない。 「北国奇談巡杖記」には、加賀国の、十人が橋に居ても九人しか水に映らない「九人橋の奇事」や、殺され沼に沈められた老僧の叩く鉦鼓が夜…