竈猫と香炉猫

 真夜中、猫が箪笥の上や棚などに乗って、物を次々に落として騒いでいる。音が響いて、目が覚める。細は寝不足になり、カッカする。猫は夜行性だから、夜もかまって欲しいらしい。
 
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 香炉を落とすのが一番困る。朝確認すると、床に灰が散らかっている。わが部屋にも、香炉があるので、2度被害にあった。香炉をLPレコードの箱に落としたものだから、レコードが灰を被った。
 
 知人に嘆くと、「猫灰だらけ、ですか」と暢気に笑う。
 観察すると、猫は前脚でトントンと2回ものを押し、3度目にはたくように強く押して床に落下させるのがわかった。香炉も同じ。猫は棚の上だから、灰だらけにならないのだ。
 朝、被害状況が判明して、猫に小言しても、猫は知らんぷり。
 
 寅さんの口上は「結構毛だらけ、猫灰だらけ」。「猫灰だらけ」の状況はどういうことなのだろう。
 
 飯田蛇笏の「自選句集」を読んでいて、
    荒神は瞬きたまひ竈猫 (こうじんは まばたきたまひ かまどねこ)
 という句に行き当たった。季語は「竈猫」(かまどねこ)。冬にぬくもりを求めて、竈にもぐり込み、灰だらけになる猫のこと。句は、竈の神様の荒神さまが、灰だらけの猫に、あれあれと、目を瞬かせてビックリ、といった内容だろう。
  灰だらけの猫はわかったが、夜の騒ぎは解消していない。