ゼウスは鷲を右手に止めた

 

 紀元前4世紀、アレクサンダー大王時代のコインというものがあって、 椅子に座った男が、ワシタカ類を右手に止めているデザインだった。
 アレクサンダー像かと思ったら違った。
 
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 調べてみたら、ギリシアの全能の神、ゼウスと黒鷲だった。
 腰布をつけ、即位した姿で、ゼウスが手にワシを止めている。
 西洋に鷹狩りが入ったのは、13世紀だから、鷹狩りの鷹ではない。
 ゼウスの持っている黒鷲は、
 1 下界を飛び回って、毎日様子を報告した、スパイのようなワシ。
 2 ゼウスが変身して、トロイの美少年を誘拐したワシ。
 と、ギリシア神話にはあって 、コインのこの鷲は、どう考えても、1のワシだろう。
 
現代の西洋の鷹狩りでは、ハヤブサを左腕に止めるが、ゼウス像を見ると、ワシはこのように右手に止めていて、左手の作法は西洋で生まれたものではないことが分かる。
そもそもは、西洋では左右どちらでもよかったのだろう。
  
13世紀、アラブへ十字軍遠征したフレデリック2世が、鷹狩り技術を欧州に持ち帰ったとき、左手のアラブ流がそのまま、導入された。
左手の理由は欧州になく、アラブの中で探さねばならない、とあらためて思ったしだい。
 
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 なお、このゼウスは、スパルタ王の妻レーダーを誘惑したときは、白鳥に変身したという。 白鳥になったゼウスが鷹に襲われそうになったとき、レーダーの腕に隠れた。その、エピソードが西洋画の伝統的なエロティックな題材のひとつになっている。
  
白鳥を襲った鷹と、コインの黒鷲の関係はよく分からないが、ギリシャでもまた、鷹は白鳥を獲るものだ、という知識は持っていたことが分かる。ギリシャ神話の白鳥と鷲は、星座として、今も残っていて、ハクチョウ座とワシ座はすぐ傍で、ともに翼を広げている。
 
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古事記に出てくるオオタカが白鳥=クグイを獲る話と、遠くで響きあっているとすると、垂仁記の話は、鷹狩りと関係したものとばかり、言い切れないかもしれない。