アシナガバチの巣が、我が家に毎年出きる。

感心するのは、見事な幾何学的なデザインであること、巣を外部にくっつける把手の箇所が、金属のように固く頑丈なこと。繊維でもって、あんなに固くなるのだとしたら新素材に利用できるのではないか、と思うくらいだ。
しかし、僕が興味を持つのは、立派な巣は作らない、ジガバチの方だ。
夏に巣穴を掘り、青虫などを捕えて入れる。単なる幼虫の餌なのだが、昔の人は、穴の中で、虫は蜂に生まれ変わって、春になって、穴から出てくると考えたという。
蜂は、ジガジガと音を立てるが、「似我似我」と漢字を当てて、蜂に似ろ、という呪文と聞いた。
ジガバチの由来を、「広辞苑」はこんな風に書いている。
蜾蠃と、書紀には漢字表記されていて、中国語でまぎれもなくジガバチのこと。
蜾蠃は、雷神を捕えるので、そもそも「力士」だったと思われるが、なんで、蜾蠃=すがる=ジガバチという名が付いたのか、不思議だった。
ならば、力士に蜾蠃の名とは、どうしてか。腰細は似つかわしくない。
雄略紀を見るとー。
「天皇は后・妃に桑の葉を摘みとらせて、養蚕を勧めようと思われた。そこで蜾蠃に命ぜられて、国内の蚕(こ)を集めさせられた。スガルは勘違いして、嬰児(わかご)集めて天皇に奉った。天皇は大いに笑われて、嬰児をスガルに賜わって、「お前自身で養いなさい」といわれた」(訳・宇治谷孟)
しいて、想像すると、蚕は、ジガバチが捕える餌に似ている。蚕集めをシガバチ=スガルに頼んだのは、蚕に似た青虫を取るのが得意なためだ、ということになる。
実はスガルは「日本霊異記」にも出てきて、もうひとつ、スガルの名の由来を想像させるものがある。(続く)