偉大なるフィールドワーカー鳥居龍蔵が、明治44年に出版した「蒙古旅行」で、かわいいらしいタカの印を紹介している。
龍蔵は、東モンゴルの小巴林王府に至る途中ホトン・ヌ・アイラという村で、遼の時代の遺物に混じって、このタカの銅印を見つけた。
「印の中に画きたるは文字なるや又図なるや明らかならざれども」と龍蔵は書いているが、「余の考へを以てすれば、此は彼の遼の時代に有名なる『杓窊の印』ならんか」と推測している。
杓窊は、ションホン、ションコンと発音し、満州語で鷹のことだ。
軍士が戦場に臨む際、この印を天子から賜わる。この印綬があれば、直ちに軍馬を徴発できるという。
満州語ではタカというと、タカ類の総称で、よくションコンが出てくる。
ハヤブサは、エゲル・ションホル。
チゴハヤブサは、ショーマン・ションホル
チョウゲンボウは、ナチン・ションホル、
といった具合に。
日本と同じように、ハヤブサ=ションホル、タカ=ハルツガイ、ワシ=ブルゲドと、分類されて呼ばれている。
モンゴルは、満州よりも、豊かなタカの文化を持っていたことが伺える。
面白いのは、モンゴルでは、タカの大小で、タカを格付けしていることだ。参考になるのは、勝利のワシの舞をするモンゴル相撲。タカの称号がある。
下位から上位へ
ナチン(ハヤブサ)
ザーン(象)
アルスラン(獅子)
アヴァラガ=横綱
と続く。
小さなハヤブサは、より大きなタカのハルツガイより格下に扱われていることが分かる。
ハルツガイで鷹狩りする日本、朝鮮半島。
さらに大きなタカ、AAA+(トリプルA)級のブルゲドのイヌワシで鷹狩りをするモンゴル西部の山岳地帯。鷹匠は、腕に止めて置くのさえ、力がいるだろうし、また、誇り高く、それゆえ傷つきやすい心を持つ鷹の中の鷹、イヌワシをよくぞ制御するものだと畏敬する。
モンゴル・ウランバートルのガンダン寺院で、ハトを捕まえて遊ぶ少年。日本でも昔こうして遊ぶ子がいた