恒友展を待ちながら武内桂舟の猫に出くわす

 前になんどか触れた画家の森田恒友の展覧会が2-3月に埼玉県立近代美術館で開かれるというので楽しみにしていたのだが、コロナウイルスのため、美術館が閉鎖されてしまい、このまま終了してしまいそうだ。2月匆々に見に行けばよかったと後悔している。
 
 恒友には、セザンヌ小川芋銭と影響を受けた画家がいるが、少年時代は武内桂舟の口絵に夢中になっていたと、自ら書いている。
 「明治二十八年と覚へて居るが、博文館から『少年世界』といふ雑誌が創刊された。(中略)その雑誌によって、私は武内桂舟、森田思軒、岸上質軒などといふ名を知り出した。特に桂舟は、毎号のやうに口絵の画家として、思軒は愛読した『十五少年』の訳者として、深く今も記憶する名前である」(昭和2年、「平野雑筆(野の子供の続き)」)。

 「『少年世界』によつて、私は画と物語とに興味を持つやうになつた。桂舟先生は実に其の雑誌に活躍したのだつた。そして翌年頃か翌々年頃か、誌上に画家の大家投票のやうな設けがあつて、桂舟先生が最高点であつたことなぞも『当然』として少年の頭にきざみ込まれたことだつた。私は当時、祖母の為めに毎日読まされた中央新聞、それの小説の挿画や、此の少年世界の口絵などで、武内桂舟の絵を何枚か模写したやうに思ふ

 

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 神保町のY書房で、先月ダンボール箱に入っていた本を漁って買った幾冊の中の「春のやおぼろ戯著 一読三歎 当世書生気質 全」(大正15年、東京堂)の挿絵に3人の画家とともに、武内桂舟のものがあった。恒友少年が心惹かれた画家の絵は、こういうものだったのか、と興味深かった。

 「当世ー」は、坪内逍遥が春のやおぼろの名で、明治18年に上梓した作品。明治10年代の東京の学生たちの生態を描いたもので、話し言葉なので、分かりやすく読みやすい。当時の街の様子、暮らしぶりが伝わってきて大変面白い。初版当時から、桂舟の挿絵が用いられた。

 

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 その中に猫の絵を見つけた。竹垣の前で、大きな体で蹲っている。後ろ向きで、尾が丸まっていて、どう見ても短い。これこそ、明治時代から海外で関心を持たれた尻尾の短い日本猫「ジャパニーズ・ボブテイル」ではないか。

 猫を描くに顔を描かずに、こういう角度で、尻尾を強調しているのが、桂舟流なのか。

 

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  英国で紹介されているJAPANESE Bobtail(「a detailed account of manx cats」から)