神田淡路町界隈には、古い店舗があって興味深い。
ランチ休憩の帰り、いつも前を通るハンコ屋を覗いた。
来年の十二支『亥』のハンコが店の外のワゴンにおいてあったからだ。
店内には、ペルシャ、シルクロードの印章など、興味深いものが飾ってあって、店主と話し込んでしまった。陶印という陶器で作られた小さなハンコも飾られていた。現代作家の作品という。古代中国の馬車が彫ってあった。手ごろだったので購入した。
印の元になった絵がきっと中国にあるのだろう、と捜している。手綱らしきものがあり、小さな御者らしき人物もいる。馬車には傘が立っていて、後部にも人影らしいものが彫られている。
近いものでは、後漢の墓室の車馬出行図。
動きのある馬の四肢などは、よく似ている。
馬車の構造が分かりにくいので調べていると、適当な絵も見つかった。川又正智「ウマ駆ける古代アジア」(講談社選書メチエ、94年)に掲載されている甘粛武威磨嘴子48号墓の馬車。
上から見た図は、横に並んで2人分の座席があることが分かる。人物は左の席に座っている。
とすると、ハンコの絵は、後部座席に人がいる描き方なので、正確に馬車を写していないようだ。おそらく、模刻でなく、創作の印なのだろう。かわいい絵柄なので、気に入った文庫本に、蔵書印の代わりに使うことにした。
問題は、紐のついた軽く小さな印なので、机の上に上った我が家の猫が、目ざとく見つけて咥えることだ。あわてて奪い返し、大事に引き出しに仕舞い込んだが、油断ならない。