明治20年、野ウサギのヒエログリフ

 前にも触れたROBERT・K・DOUGLASの「CHINA」という英語の本は、水道橋にあったビブリオ書店で、主人の川村さんから安く譲ってもらったものだ。
 1887年、ロンドンで発行されたもので、清朝の風物のイラストが興味深い。文中に、古代エジプトの絵文字ヒエログリフが印刷してあったり、飾り文字や、隙間を埋めるためのイラストがあったり、丁寧な本作りをしている。
 
 ヒエログリフは、漢字とヒエログリフの類似を示す文章にはめ込んでいた。
 
 イメージ 1  
 野ウサギは「UN」。ウンと発音する。波(Nと発音)と組み合わせて表記する。 
「UN」には、ほかに、「開ける」という動詞や、名詞の「鏡」もあって、紛らわしい。
 そこで、野ウサギが示す「UN」に、鏡や、開ける、ことを示す絵を添えたというのだ。
 
   イメージ 2 鏡の絵を添えて イメージ 3  鏡になる。
  
 
  イメージ 4 開ける絵を添えて、 イメージ 5 開けるになる。
 
「開ける」はウサギが乗ったハンバーガーのよう。
 野ウサギなしの、開ける絵、鏡の絵だけで、UNと読めないのか、と突っ込みたくなるが、漢字の仕組みと同様なのだった。
 
 まあ、そのようなことが、明治20年(1887)の本の一章で書かれている。今は研究が進んで、あるいは少し訂正されているのかもしれない。しかし、こんな風に、小、中学校時代、教わったら、エジプトにもっと興味を持ったかもしれない。
 
 当時、ダグラス先生が仕事をしていた大英博物館を、歴史学、考古学、教育学者となる若き三宅米吉が留学で訪れている。
 大きな体験だったのだろう。米吉は帰国直後、九鬼隆一のもと古寺の調査をした際、法隆寺の遺宝の布きれ「獅子狩紋綿」が欧州留学で知った中近東のデザインと酷似しているのに気付き発表した。日本の古代文化が、バビロニアペルシャ、さらに遥か欧州のギリシアまでつながっていることを示唆した大きな出来事だった。
 
 ダグラス、米吉の明治20年ごろの、知に対する素朴な好奇心が満ちていた時代が少しうらやましい。