4本の歯を抜いて元気になった猫

 17歳になった我が家の猫の歯周病がいよいよひどくなって、スープ状の食べ物しか受け付けなくなった。口の中が痛いのだ。元気がなくなった。
 
 いつもと別の猫専門病院に行って、相談した。年配の先生は、「ほら、見てください」と猫の口をあけて、歯肉から浮き上がった2本の奥歯を触った。
「ぐらぐらしているでしょう」。
 猫はそのたびに、怒りのニャーをあげる。
「悪い歯だけを取れば大丈夫でしょう。半日の手術ですね」
 
 きのうの朝、猫を預けに行った。夕方に受け取りに行くと、診察台の皿に、小さな歯が4つ、並んで置いてあった。
「4本でした。もともと、5本の欠歯がありましたから、残り21本になりました」
 猫は、麻酔から完全に醒めておらず、目にいつもの光がなく不安だったが、
「徐々に醒めますから、心配いりません」
 猫は、帰宅しても相変わらずぼんやりしていたが、明方になって、元気になった。起こしにやって来て、猫用玩具の前に連れて行き、これで遊んでくれという。眠いまま、要求にこたえると、猫は、羽付きの玉を追いかけて、前後左右に走り回り、玉を宙に持ち上げると、大きくジャンプした。
 
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 満腹になると、窓辺で日向ぼこをし、ウトウトしていた。猫の歯について、何かなかったかと、思案して、おもいだした。縄文時代後期の猫の歯の図があったはずだと。
 
 
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 東京・大森の下沼部貝塚で発掘された家猫の、下顎の骨片だ。昭和13年(1938年)に、松岡六郎氏が発掘した骨を、直良信夫氏が「古代文化」第13巻4号(昭和17年)、「史前遺蹟出土の獣骨(八)」で紹介している。
 図のP3、P4の歯が前臼歯、M1が後臼歯。(猫の臼歯は上顎では1本多く、上下左右で計14本)
 我が家の猫の、持ち帰った4つの歯の形から、抜歯されたのは前臼歯2本、後臼歯2本と判った。
 
 直良氏によると、骨から見た縄文時代後期の家猫は、顔面が長めで、眼後ろの括れが鈍いという。南アジアの野猫と現在の日本の家猫の中間様を示していると、1930年代に、日本猫の南アジア源流説をとっていた。
 
 うちの雑種の猫も、縄文猫の末裔なのだな、と抜歯をきっかけにあらためて思った。