猫の墓について副住職はこう言ったが

 拾ったのはいいが、手に負えなくなって、知人に引き取ってもらった猫が亡くなった。3年半。拾ったときは子猫だったから、4歳位だったろう。
 
 ガンだったという。病院も代えてできるだけの治療を施してもらったが、短い命だった。余命1か月を言い渡されてから、3か月生きて獣医師も驚いていたそうだ。亡くなった日は、留守中に、体調が急変したようだが、仕事から帰る飼い主をじっと待っていて、顔を合わせてから、安心したようにストンと意識を亡くして息を引き取ったそうだ。
 
 獣医に紹介してもらった火葬場で、小さな骨を母子で「骨揚げ」してきたのだという。長かった尾は、小さな骨が点々と並んでいて、あのよく動く尻尾はこんなだったのか、としみじみ思ったのだという。
 
 骨壺は持ち帰ったそうだ。知人には、本当に感謝している。
 
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 我が家の墓がある京都・嵯峨野の浄土宗寺院の副住職に、猫と墓について、話を聞いたことを思い出した。
副住職と親しい古刹の住職がペットの墓地を造り、著作をものしたからだ。
 本によると、その寺では、先に亡くなった亭主や家族の墓参には滅多に来ないのに、亡くなったペットの祥月命日には、必ずやって来て、墓前で泣いているご婦人方がたくさんいることが書かれていた。猫や犬が、いかに家族を精神的に支えて来たか、ペットを疎かにできないとも、記されていた。
 
 副住職には、教義上、猫も成仏できるのか、我が家の墓に猫は入れられるのか、と聞いたのだ。
 「あの著者のお寺も、ペットの墓はペットだけの別の一角です。うちの寺で、あなたと一緒に猫を埋葬するのは無理です。というか駄目です。そうですねえ、強い希望なら、墓石の上、つまり地上部分に、猫の収納場所を別に造って収めるのはギリギリ可能かな、とも考えます。しかし、仕切っている父親の住職が許可するかわかりませんがね」
 
 軽い気持ちで聞いたのだがー。意外な答えだったので、ずっと思案している。