土器の縁近くに、「周」の文字の左半分が残っていたものだ。漢字が当時広まっていた可能性を示唆する貴重な発見らしい。
僕は、カラカミ遺跡が、イエネコの骨が出土した遺跡として知っていたので、発見は興味深いものだった。
イエネコらしい骨は縄文時代の遺跡からも出土しているが、カラカミ遺跡では10年前に、十数点のネコの骨が発掘されている。2014年、遺物を奈文研が分析した結果、遺構から出土した成猫の前腕骨を確認することに成功し、室内に猫がいたことが分かった。
ニュースを聞いて「周」は、姓名や地名ではないと思った。イエネコが頭にあったせいもある。「周」はネコの好きな「鯛」。魚偏を省略したタイの「周」だと。
偏の省略は、青銅器の金文などで頻繁に見られる。
「鏡」が「竟」とか、
「鉅」が「巨」と、
省略されたものが多数ある。周を鯛の略と考えるのは荒唐無稽ではない。
「鯛」という文字は、8世紀に下るが出雲国風土記、万葉集に登場している。また、鯛はいまでも祝いの時に用いられる特別な魚だ。伊勢神宮では塩漬された干鯛が奉納され、愛知県知多郡篠島では、「篠島御贄干鯛」を捧げる祭「おんべ鯛奉納祭」が行われている。
魚に限らず、神に贄をささげる容器には、文字が書かれている例が多いのも注目だ。
この土器は、口径が23センチ、高さ7.7センチ。鉢のようである。真鯛は長さが40センチ以上。口径23センチの出土土器では小さすぎないか、と疑問がわいた。