トビとハイタカが混線している

イメージ 1
 
 哀しきは、動物園の鷹たち。このトビも、捕えられなければ、大空で輪を描いていたろうに。前回、フランスのことわざで、「ノスリハイタカにはなれぬ」というのを紹介した。人に懐いてしまうノスリは、頑張っても、気高いハイタカにはなれない、という意味で、「鷹狩文化」の発想から由来したものだろう。
 
 しかし、不思議なことに、日本の建国神話で、ハイタカノスリどころか、雑食性のトビにまでなってしまっている、例がある。
 
 神武天皇を助けた「金鵄」のことだ。日本書紀の巻3。
 天皇が東征し長髄彦を討伐する際、苦戦し、雹まで降り出して窮地に立った。その時、弓の先に金鵄がとまり、光輝いて、稲光のようになった。長髄彦たちは目がくらみ、力がはいらず、戦えず、降伏した。金鵄は、「ヤタ烏」とともに、神武天皇の東征を助けた伝説の鳥だ。
 
 前回、トビは、鷹狩り文化のある国では、尊敬されないと書いた手前、金鵄勲章」まである日本の、トビの扱いについて、説明が必要と思ったのだ。確かに、日本書紀では、「鵄」はトビと読ませている。鵄邑が今の「鳥見」だ、という説明までしてある。
 
 しかし、そもそも漢字の故郷、中国には、「鵄」にトビの意味はない。「鵄」は「鹞」の別字で、ハイタカを指している。ハイタカは、オオタカ属で、日本でも鷹狩りを代表する鷹だ。軍功をあげた金鵄にふさわしい。
 
  日本の歴史学者は、ハンガリーに、turulという鳥が建国を助ける類似の神話を例にあげ、turulを、「鵄または鷹」などと軽率に注を入れている(岩波文庫日本書紀1)。トビとタカを一緒くたにするというのは、鷹狩り文化についての認識が足りなかった証拠だろうと、感じる。
 
 ハンガリーのTurulは、トビではない。ハンガリーの古典に登場するハヤブサは、3つあり、
 kerecsen=SAKER=セイカハヤブサ
 zongur=GYRFALCON=シロハヤブサ
 そして、このturulなのだという。
 
 セイカハヤブサ、シロハヤブサが、大型の代表的な鷹狩りのハヤブサであることから、turulも、立派なハヤブサと推定される。
 
 ブタペストの、turul の立派な像を見てほしい。
 
 
 断じて、トビではない。
  日本では、 ハイタカとトビが、混線しているのだ。どうしてだろうか。
 
 
 
(続く)