哀しきは、動物園の鷹たち。このトビも、捕えられなければ、大空で輪を描いていたろうに。前回、フランスのことわざで、「ノスリはハイタカにはなれぬ」というのを紹介した。人に懐いてしまうノスリは、頑張っても、気高いハイタカにはなれない、という意味で、「鷹狩文化」の発想から由来したものだろう。
天皇が東征し長髄彦を討伐する際、苦戦し、雹まで降り出して窮地に立った。その時、弓の先に金鵄がとまり、光輝いて、稲光のようになった。長髄彦たちは目がくらみ、力がはいらず、戦えず、降伏した。金鵄は、「ヤタ烏」とともに、神武天皇の東征を助けた伝説の鳥だ。
前回、トビは、鷹狩り文化のある国では、尊敬されないと書いた手前、「金鵄勲章」まである日本の、トビの扱いについて、説明が必要と思ったのだ。確かに、日本書紀では、「鵄」はトビと読ませている。鵄邑が今の「鳥見」だ、という説明までしてある。
日本の歴史学者は、ハンガリーに、turulという鳥が建国を助ける類似の神話を例にあげ、turulを、「鵄または鷹」などと軽率に注を入れている(岩波文庫「日本書紀1)。トビとタカを一緒くたにするというのは、鷹狩り文化についての認識が足りなかった証拠だろうと、感じる。
zongur=GYRFALCON=シロハヤブサ
そして、このturulなのだという。
ブタペストの、turul の立派な像を見てほしい。
断じて、トビではない。
日本では、 ハイタカとトビが、混線しているのだ。どうしてだろうか。
(続く)