諏訪流鷹匠の大塚紀子さんの「鷹匠の技とこころ 鷹狩文化と諏訪流放鷹術」(白水社)によると、日本の鷹犬は、セッターやポインターのように 猟の作法をなかなか習得できず、 特に鷹犬に一番要求されること、鷹や鷹の獲物に飛びかからずにじっとしているのが難しかったという。
それで、人間の「犬牽(いぬひき)」が付いて、犬が飛びかからないようにセーブしたのだとしている。
先に触れた奈良時代の記録では、「鷹養人の貢上」とともに「犬の貢上」が出ているが、「犬飼人の貢上」は記されていない。
鷹狩りを模した10世紀平安時代の「放鷹楽」に登場する犬飼は、「犬牽」の役目をしていたと考えられるので、鷹犬はこの頃には犬牽がついていたことがわかる。
前掲書によると、鷹犬は、獲物を狩るまでの飛行距離が長いハヤブサ類では欠かせないが、日本のオオタカのように、急上昇が出来、獲物を取る範囲が短距離の場合は、人間も目視できるのでさほど必要でもなかったという。
クチ=ハヤブサから始まったとされる日本の鷹狩りは、平安時代までに主流がハイタカやオオタカに移ってしまった。ハヤブサ類の鷹狩では不可欠の鷹犬も、存在意義が薄れ、鷹犬の本格的訓練が途絶えてしまったようだ。
ちなみに、鷹匠の大塚さんは、自分の鷹犬にハンガリーの猟犬「ビズラ」を用いていると書いている。前に、「ターキッシュ・イエロー・ドッグ」の血を引いていると記した猟犬だ。 日本での鷹犬についても知りたいことだらけだ。