コロナ自粛が緩和されてから初めて、神保町の猫の古レコード店に顔を出した。
少しずつ、お客さんが戻って来たという。猫は奥の棚の中でじっとしていたが、呼ぶと出てきた。撫でられるのが好きな猫なので、しばらく撫でて過ごした。
主人によると、コロナ自粛の時も、ヤクルト販売のお姉さんが毎日のように猫を撫でに来てくれたという。
気温が下がり、冬のような午後の陽気だったので、レコードと一緒に店で売っているネパールのショールを買うことにした。冬を前にわが家の、ソファの背の上の猫用スペースに敷こうと思ったのだ。
古レコードは、数枚買った。
帰宅してチェックすると、その一枚のレコードジャケットは、イエスが猫を抱いた聖母子像のスケッチだった。猫の頭が大きめなので、犬のようにも見えた。「バロック・ギター音楽選集」という63年の邦盤で、クエトがバッハ、ヴィヴァルディを演奏している。
最近教わったスマホのアプリ、「レンズ」で絵を検索すると、レオナルド・ダ・ヴィンチの「猫を抱く聖母子像の習作」だと判明した。やはり猫だったのだ。
13cm×9.4cmの紙片にスケッチしたもので、6点あるもののうちの1点。黒インクのペン画で、1478-81年ごろ描かれたものという。大英博物館所蔵だった。
Da Vinci /cat でさらに検索すると、ダ・ヴィンチは他にも、猫とライオンと竜を一枚の紙に描いたスケッチがあるのだった。小片に猫の様々な生態が描かれ、メスライオンか、ヒョウのように見える動きのある動物が同居している。そしてなぜか、中央に、不気味な西洋風の竜が一つ。猫を参考に、架空の獣を描いたのかとも思われた。
猫が登場する聖母子像は、野鳥のゴシキヒワを調べているうちに、1575年のバロッチの作品に行きついたことを、前に書いた。猫が悪魔の使いとみられていた16世紀によく猫を描いたものだ、と画家バロッチの猫好きぶりに感心したのだった。
その約100年前にダ・ヴィンチは習作ながら猫を多数描いていたのだった。
しかも、聖母子と猫を組み合わせているのは、すごいことかもしれない。聖母子と共に描かれたヨハネが猫を抱いているスケッチもあった。
ダ・ヴィンチと猫についても知りたいが、今は手一杯の状態だ。
古レコードから、得られる情報は他にもあった。
スペインの作曲家、アントン・ガルシア・アブリルのギター協奏曲のLPも択んで購入した。家に帰って聴くと、美しい旋律。調べてみると、作曲家は、今年3月にコロナ感染で亡くなっていた。(ジャケット写真の右端がアブリル氏)
マカロニ・ウエスタンの映画音楽などを手掛け、王立アカデミーの院長などをしていた。87歳だった。コロナが世界中で猛威をふるったことを、あらためて認識した。
買って来たショールを猫は気に入ったらしい。その上でちょこんと座っている。そばで、細が、私それ欲しかったのに・・・とつぶやいた。ひざ掛け用らしい。
古レコード店の猫にまた、会いに行かないとならないようだ。