神保町のネコとジネズミ

 6月に入って、神保町の古書店街が店をあけたので、昼に散歩に出た。

 緊急事態宣言下の5週間は、古書店が一斉休業。街は寂しいものだった。6月になって宣言は継続されたものの、緩和措置とやらで、休業解除を決めたようだった。

 

 やっこ寿司に寄ってから、神保町の駅の方までぶらぶらすると、A書房の店先の100円コーナーも始まっていて、2、3人の人影があった。

 

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 岡鹿之助が装幀している中山義秀「なすな恋」(昭和23年、玄理社)があった。あれこれ4冊を択ぶ。100円本には袋は出さないという古本店の決まりがあるので、そのまま手に持って、古レコード店に向かう。

 

 まずは店の看板猫に挨拶する。休みの間、ご主人から猫の後脚に禿げが出来たと、メールが届いたので気になっていたのだ。動物病院に連れて行くと、原因不明といわれたが、処方された塗り薬で、毛は生えだしたと書いてあった。

 床に寝そべる猫。禿げはまだ残っているものの、元気な様子だった。ご主人は「やっと、店が開いたので、雰囲気が分かるんでしょうね、朝から喜んでいるんです」。

 伸びをする猫の脇腹を片側ずつ順番に撫で、首元を静かに柔らかく揉むと、気持ちよさそうに目をつむる。猫は猫。わが家の猫と同じ反応をする。

 

 お客さんも長い休みが終るのを待ちかねていたのだろう、年配の客が来店して、クラシックレコードの棚を忙しげに漁りだした。続いて馴染みらしい男性が来て店主と挨拶をかわし、ジャズLPを探している。次いで、若い男性も入って来た。

 神保町の一本裏の道にも人出が戻ったようで、なんだかうれしい。

 

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 4枚を択び、ビニールでなく大きな紙袋に入れてもらい、一緒に古本も収める。さあ、事務所に戻らなくては。

  戻って、岡鹿之助装幀の「なすな恋」を見ると、表紙絵の点描のアゲハチョウの絵は、点描画家らしいのだが、扉絵には、点描でない、ペン画のようなネズミのカットがあって、目を惹いた。

 鼻が長いネズミなので、気になって調べてみると、ネズミではなく「トガリネズミ科」のジネズミだった。ネズミの呼称はついているが、モグラの仲間だった。ただし、普通のモグラと違って、地中で暮らすことがなく、地上でのみ生活しているという。

 絵のように、尖った鼻が特徴で、猫もネズミだと勘違いしているようだ。モズ、蛇に加えて、猫もジネズミの天敵とされる。飼い猫がジネズミを咥えて、家に運んでくることもよくあるらしい。

 

 久々の神保町散歩は、ネコとジネズミに出会う楽しい午下となった。