「FBI」とハヤブサ

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 米CBSの人気シリーズ「FBI 特別捜査班」。主演女優がカナダ出身のMissy Peregrym。ハヤブサperegrineに、似た発音、スペルの名前なので、ワシタカ類に関心をもつ者として、前から気になっていた。

 小顔で肩幅が広く、筋トレで鍛えている様子なので、動きもシャープで逞しく見える。経歴を見ると、アクションもので剣を振り回し、ホラー作品で闘う強い女性を演じ、学園ものでは体操選手として鉄棒演技をしていた。

 相棒のイスラム教徒の男性捜査官と組んで、FBI犯罪捜査の最前線に命がけで飛び込む役には、ピタリのキャラクターだった。「ハヤブサ女性捜査官」は頑張っている。

 

 この「FBI」最新作に、実際、ハヤブサが出てきたので、びっくりした。彼女たちを差し置いて、FBI逃亡犯特捜班のラクロイ特別捜査官が活躍する異例の18話(Spin-off されてシリーズ化するための紹介版のようだ)。

 このラクロイ捜査官が、娘と一緒に、ケガをしたハヤブサを室内で飼って育てているワンシーンだった。頭に被せられた革製のフードを外されたハヤブサは、娘の腕から捜査官が手前に投げた紐の先の餌に向かって飛びかかってゆく。「もう大丈夫」と捜査官が娘に、ハヤブサが、野外に放てるほどに回復したことを告げる場面だった。捜査官が鷹狩に精通している人物だと示していた。

 ニューヨークなどの高層ビル街では、多くのハヤブサが営巣し、上階から時速100キロ超のスピードで急降下し、小鳥たちを捕まえて暮らしている。米国各地の高層ビルのハヤブサたちはドキュメンタリーで紹介されているが、こんな形でドラマにも登場したのだった。壁にぶつかってハヤブサがケガをしたという設定だった。

 

 シナリオライターは、鷹狩に詳しいのではないかと思わせるドラマ展開だった。家族を殺した逃亡犯は、少年時代父親に虐待された過去があった。犯人逮捕の際のやり取りで、この捜査官もまた犯人同様、少年時代に似たような境遇であったことが描かれていた。

 

f:id:motobei:20200818143909j:plain WHITEの「The goshawk」

 

 鷹狩にはまり込む行為と少年時に心の傷を負った人間との関連については、鷹狩を扱った人気ノンフィクション、ヘレン・マクドナルド「H is for Hawk」が、オオタカを用いた鷹匠の先輩、英作家のT・H ホワイトを通して描いていた。

 少年時代に両親から受けた冷酷な仕打ちを引きづっているホワイト。孤独な作家は、ドイツとの戦時下、精神的に追い詰められながら、地方の自然の中でオオタカを馴らして鷹狩を目指すことで、なんとか精神の危機を乗り越えようとした。

 

f:id:motobei:20200818144109j:plain Macdonald「falcon」

 

 鷹狩を好む捜査官と、過去の心の傷を持った人間とのシナリオでの重ね方は、マクドナルドの著書の影響かと思われたのだ。

 

 気になった点はひとつ。ドラマに登場した野生のハヤブサのことだ。ビルに営巣するハヤブサ(Peregrine)というより、高価な白ハヤブサ(gyrfalcon)のような美しいハヤブサだった。