佐川忠金センセイのあひるに出合った

 昼間から細と電車にのって散策にでかけた。
 半分用事があったが、はたせずじまい。日差しが強く、喉がかわいたので、生ビールで一休み。みると、向かいに骨董屋のような古道具屋のような店があった。
 
 酔い覚ましもかねて、広い店内をまわっていると、額入りの小さなクレヨン画があった。
 作者名をみて、吃驚。はるか昔、小学校の時の絵の先生の名前ではないか。
 
 額の裏に、作者の経歴が書いてあり、「光風会」「愛媛出身」ー。まちがいない。小学校の美術の先生だった。姉にケータイで連絡すると、「サガワ先生は、小学校の時、自宅まで絵を習いに行ったよ」となつかしがる。
 
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 朱と赤と黒と銀の4色で、鳥の親子をえがいたものだった。「あひるだ」というと、細は「えっつ、よくわからない」という。
 店番の小母さんも、「なにを描いているんでしょうかねえ」。左に母鳥。右下が4羽のヒナでしょうが。画用紙の隅に描いて、はさみで切りとったような小品なのに、結構な価格だった。
 細は「縁だから、買ったら」といいつつ、「負けてもらえないのかなあ?」。小母さんは、オーナーに聞かないと自分の判断では決められない、しかも、オーナーは今日はいない、という。
 
 さてさて、この鳥だが、ガチョウに見えないこともない。
 しかし、あひるとガチョウは、ちがう。カモ(マガモ)が家禽化した、あひる。雁が家禽化したガチョウ。
 
 攻撃性がのこっているガチョウにくらべると、あひるのほうが、おだやかな印象がある。この絵の鳥はあひるの母子だよ、と言い値で買うことにした。
 
 佐川忠金先生から、クロッキーの時間に、こんな指導をうけた。
「人物は、頭や顔から描きだしてはいけないよ。線が死んでしまうから。思いきって指先から描いてごらん。線が生き生きしてくるから」
 言いつけを守ったせいか、美術室の廊下にクロッキーはよく、貼りだされたのを思いだす。
 
 絵以外の、社会的、日常的な物事でも、わかりやすい顔や目などではなく、指先など遠いところから物を見るクセが出来てしまったのは、この先生の言葉の影響が大きかったかと、今日になって、おもいあたった。