
モンゴル語で「力士を引退する」ことを「ゾドク タイラハ」(ゾドクを脱ぐ)と表現する。引退しないでが、「ゾドク ブー タイラーチ」(ゾドクを脱がないで)。
モンゴル相撲では、力士はゾドクというベストと、ショーダクというパンツを身に着ける。お互い相手のゾドクとその紐をつかんで戦うから、ゾドクは日本のまわしの代わりといっていいかもしれない。

この相撲衣装ゾドクを脱ぐことが、モンゴル力士にとっての引退なのだ。
しかし、よくよく考えると、旭天鵬は日本で23年間まわしをつけて戦ってきた。ちょうど40歳だから、人生の半分以上にあたる。
子どものころからモンゴル相撲をしていたとしても、ゾドクよりまわしの生活時間が長いことになる。実際は、ウランバートル生まれの彼は、バスケットは得意だが、相撲経験はなかったらしい。
1992年に大島部屋に入門した少年の一人が、ゾドクでなくてまわしをつけて、ここまで相撲を取り続けてきたことは、すごいことと思う。
今朝、ゾドクを着たことがないモンゴル力士が「ゾドクを脱がないで」と言われている不思議さを思った。