12世紀猫の6態に感心する

 古代、中世に「猫の美術」はないと、おもっていたら、春日大社に12世紀、平安末期の猫のお宝があった。
 沃懸地螺鈿毛抜形太刀」。
 
 猫の6態がかたどってある。「仏教芸術266号」(毎日新聞社2003年)をとりよせて、
 
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巻頭の、猪熊兼樹氏「春日大社の沃懸地螺鈿毛抜形太刀」をよんだ。太刀のさやのデザインに、竹林で群雀をおう猫が螺鈿細工でいきいきと描かれている。
 
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  座って雀を振り返ってみる猫
  歩く猫
  走る猫
  雀をとらえる猫
  猫の首にはリボンがつけられていているから飼い猫だ。
  猪熊氏は、この意匠の主題が典型的な宋画のものであることを検証し、日本の絵師や図案家が考案したのではなく、宋画を学習して成立したものだ、と喝破している。
 
   前に宋の写実美術が、日本の鎌倉彫刻に絶大な影響をあたえたと書いたが、12世紀、日本の工芸にも大きな刺激を与えていたことがわかる。宋画に多くえがかれた猫は、日本にも、太刀の飾りの猫の意匠や、平泉、鎌倉の銀造猫として、おそらく数多くもたらされ、うみだされていたのだ。
 
(続く)