トンボは渦巻を盗む者?

 トンボの話の続き。
 トンボに親しみを持っているのは、日本がいちばんかもしれない。
 例えば、モンゴル。トンボに対する無関心さにはおどろいてしまう。モンゴル語で、トンボのことを3つくらいの言葉で表すが、そのうちの一つ、ウルム・ホルガイチを、 モンゴル国の「蒙蒙辞典」には、「動物:蝿の一種」と記してある。
 また、モンゴル発行の青少年百科辞典には、蜻蛉の絵に、「ソノ」とエトキが付いている。ソノは「馬虻」(新蒙日辞典)のこと。
 トンボは、虻や蝿扱いなのだ。
 
 気になって、古代に描かれたトンボを探すと、 幾部族かのネイティヴ・アメリカンのものくらいしか見つからない。弥生時代の銅鐸にたくさんの絵が残り、記紀にも登場し、国名=大和に、「トンボの島」=秋津島という枕詞、修飾がつく。わが国は例外的なトンボ愛好国なのだった。
 モンゴル語のトンボ=ウルム・ホルガイチは、「ウルム泥棒」の意味がある。
「ウルム」は 1)牛乳などの上皮の薄い膜
       2)キリ、螺子キリ
       3)水の渦巻き
の意味がある。トンボは、1から3の内、何を盗むのか。
 島根県の加茂岩倉遺跡から大量の銅鐸が発見され、蜻蛉の絵が描かれたものも出土した。鹿や猪のような四足動物などと一緒に描かれているが、絵とともに、四頭渦文という4つの渦の模様が描かれていた。水の渦なのだろう。トンボが水に卵を産み落とすとき、尾を水面に叩くのをよく観察したものだ。尾から波紋が生まれる。
 
 竿先に止まっているトンボを捕まえるとき、人差し指でくるくると渦を巻くのも、不思議な仕草だ。 トンボが目を回して手で捕まえられる、といわれたものだが、一度も成功したことはない。
 そもそもトンボは渦巻と深い関連があって、今では忘れたその残り滓が、こんな形で現われているのではないか。
  トンボと渦巻。モンゴルのトンボの命名は、「水の渦を盗む者」として、近隣民族から移入されたものかもしれない。
 
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