ハープシコードとワタリガラスの研究家がいた

 世界で、ワタリガラスのあつかわれ方は
1 賢い鳥
2 不吉な鳥
に2分されることがわかった。
 
2 は、とくに欧州。「a bird of ill omen」 として、魔女のように、数世紀にわたって大量に駆逐されたようだ。
 
 ハープシコードに、ワタリガラスの羽の軸がもちいられたことについて、スウェーデンの研究家で演奏者でもある、tilman skowroneck 氏は、興味深くかいている。(「harpsochoed voicing」2008)
 
 ワタリガラスの羽軸は弾力性があって、ハープシコードの弦をはじくと、現在使用の人工樹脂delrin=デルリンに比べ、大きくて、やわらかい音がうまれる。
 しかし、さがしてみると、大型のカモメの羽軸が、ワタリガラスよりもっと大きな音がでることがわかった。米国のワイルド・ターキーの羽軸も、美しい音をだした。
 
 結局、ワタリガラスの羽軸が好まれたのは、手にはいりやすかったことが大きな理由だった。ワタリガラスは、長い間、欧州で不吉の鳥とされた」。そのため、「数世紀にわたり、欧州中で狩猟され、駆除された」。「大量の羽がでまわり、市場で手にはいった」のだと。
 
 ワタリガラスは、今では、もちろん生息数は回復したが、北欧の研究家の住む森の近くでも、羽は得にくいという。そもそも、他のカラスとちがって、羽が大量に抜けおちないので、狩猟でもしないかぎり、羽は手にはいらないらしい。
 
イメージ 1オーデュボンのワタリガラスをひらいてみた
 
 
 ハープシコードワタリガラスのかなでる音色の背後に、ワタリガラスの悲しい歴史がかくされている。