駿河台下の珈琲店の鳥

  お盆休みに仕事。というか、駿河台下の事務所で留守番だ。昼時、外に出ても大半の店は閉まっている。

  18日あたりから開きだしたので、ほっとする。80歳の女性が切り盛りする私の大好きな古い珈琲店に出かけると、客が帰ったところで、誰もいない。

 壁に掛けられた鳥のイラストのことを知るいい機会だ。
「鳥が好きなので、ケータイでとっていいですか」
「どうぞどうぞ、お好きになさってください」
 赤い鳥のイラストが、前々から気になっていたのだ。
 
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 オオマシコじゃないし、アカフウキンチョウでもない。ケータイの力で、上にかかれた文字が分かる。

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 イタリア語だった。CODIROSSO ORDINARIO
 シロビタイジョウビタキだった。英名は、COMMON REDSTART。
 オスは、腰から腹、上尾筒が橙色。夏羽は顔から胸にかけて黒。冬羽は銀白に変わるという。間違いない。
 日本には迷鳥でやってくることがあるが、繁殖地は、アフリカ北部から欧州、ロシアの中南部冬は、アフリカ中部、欧州南部、西南アジアに渡って、越冬するという。

 ちょうど、このイラストが描かれたイタリアは、繁殖地、越冬地に当たる。
 私の好きなこの店のブレンド珈琲は、なくなったご主人が長年かけて到達した味で、今も奥さんが守っている。あの鳥は、珈琲豆の色をしているので、ご主人が選んだのだろうか。

 「珈琲色の鳥は、シロビタイジョウビタキでした」と女主人に、伝えるべきか。
 黙っていよう。