沖縄の魔物も、ハブも直進する

 
 今回の旅行では、那覇国際通りの土産店のウインドー越しに「石敢當」(いしがんとう)の土産が 沢山置いてあるのに気付いた。 
 
 シーサーについで、土産物の世界に石敢當が登場したことに正直驚いたし、三越前など、 街中に現代風の石敢當があったのも目新しかった。
 
 屋根や玄関で魔を避けるシーサーに似て、石敢當も民家の塀、壁などに設置して、魔物を打ち砕くとされる。 
 
 T字路とか三叉路で、道が塀や壁にぶつかる辺りに、「石敢當」と書かれているのが、それだ。魔物は直進すると考えられていて、道の流れに沿って、家に入っては大変、と石敢當が置かれる。さながら魔物は、現代なら、自動車のように、曲がりきれずに激突してくるものということになる。
  
 古い沖縄の民家の入り口に、ひんぷんという壁が作られ、やはり魔物がぶつかって、はいれないようにしてある。人は左右を通って敷地に入る。
 
 
 沖縄では、魔物は直進するものと決まっているのだった。
 石敢當は、琉球王国時代、那覇の「久米村」に住んでいた唐栄人=中国渡来の外交業務職能集団が持ち込んだらしい。風水を民間に広めた風水師(フーシーミー)も一役買ったのだろう。
 
 しかし、直進する魔物のイメージがもうひとつピンとこない。光のように直進するのか、「気」のようなものか。ひょっとしてー、
 
 僕は毒を持つ沖縄の代表的なへび、ハブのことを想像した。ハブは普段、普通のヘビのようには、蛇行しない。1分間1㍍というゆっくりとしたペースで直進する。腹部のウロコを利用して進むのだそうだ。泳ぐとき、急ぐときは蛇行するが、原則、直進なのだという。
 
 沖縄の魔物のイメージは、蛇嫌いの僕には、ジワリ直進して近づいてくるハブがピタリに思えてくる。