T字路とか三叉路で、道が塀や壁にぶつかる辺りに、「石敢當」と書かれているのが、それだ。魔物は直進すると考えられていて、道の流れに沿って、家に入っては大変、と石敢當が置かれる。さながら魔物は、現代なら、自動車のように、曲がりきれずに激突してくるものということになる。
古い沖縄の民家の入り口に、ひんぷんという壁が作られ、やはり魔物がぶつかって、はいれないようにしてある。人は左右を通って敷地に入る。
沖縄では、魔物は直進するものと決まっているのだった。
しかし、直進する魔物のイメージがもうひとつピンとこない。光のように直進するのか、「気」のようなものか。ひょっとしてー、
僕は毒を持つ沖縄の代表的なへび、ハブのことを想像した。ハブは普段、普通のヘビのようには、蛇行しない。1分間1㍍というゆっくりとしたペースで直進する。腹部のウロコを利用して進むのだそうだ。泳ぐとき、急ぐときは蛇行するが、原則、直進なのだという。
沖縄の魔物のイメージは、蛇嫌いの僕には、ジワリ直進して近づいてくるハブがピタリに思えてくる。