見上げれば、冬の夜空に青白く光るシリウス。
余すところ今年も10日となってしまった。
詩人の笹沢美明が12月のあとは13月が来るのだと思えばいい、という詩を書いていたと記憶する。でも、それは無理だ。
オリオン座の近く、全1等星のなかで最も明るい星なのですぐ分かるシリウスは、オオイヌ座の主星のせいか、「DOG STAR」と呼ばれているのだと、最近になって知った。
『イヌの星』。なかなかよい名ではないか。
そんな折、シリウスの勇ましい歌を発見した。
I’ll sail upon the dog‐star
シリウスに乗って空に乗り出し、朝に追いつき、正午まで月を追いかけよう、
雪山に登って天気を決め、虹を空から引き裂き両端を結わえ付けよう、
星も軌道から外して袋に詰め込もう。
作詞はトマス・ダーフィー(1653-1723)という劇作家で詩人(詳しくは知らない)。劇付随音楽「愚か者の出世」(A Fool’s Preferment)の中の、短い英語の歌曲だが、結構今でも歌われている。
シリウスの犬については、オリオンの猟犬説など、各種の説があるのだという。
クレタ島ミノス王の愛犬で、どんな獲物も逃がさないという才能に恵まれた犬だ。王の宝物だった。
やがて、誰からも逃げる才能を持った狐を追いかけまわす運命となり、犬狐双方とも「矛盾」の迷路に入ってしまう。それでゼウスはともに石に変えてしまった。
そこで、「天球図譜」を開いてオオイヌ座を見てみると、ごらんのようになんとも、おとなしそうな犬が描かれている。賢そうではあるが、スポーティーでない。
イメージが違うなと思ったら、「天球図譜」はフラムスチードの友人が受け継ぎ、1729年に発行されたものだった。絵は、画家ゾーンヒルのペンによるものだという。この人も知らない。