#犬

鳥獣戯画絵巻施入と湛慶と

西行法師が鎌倉の鶴岡八幡宮で源頼朝から貰った銀製の猫をめぐって、つらつらと書いてきた。銀猫は残っていないが、同時代の中国・宋の写実主義絵画の猫をもとに作られたと推測した。さらに、時代は40年ほど下るが慶派の仏師湛慶が制作した京都栂尾・高山…

猫飯と犬車の話

子供時代は夏休みになると、祖母の大阪の家に泊まりに行った。小学生の姉と2人きりで出かけたこともある。「こだま」は、当時東京―大阪間6時間50分かかったので、心細かった。出発前に、母が心配して列車に乗り込み、見ず知らずの隣席の男性に「この子た…

ハルビンで連行された愛犬家四迷

知人宅の隣家の飼猫が、前から我が家の猫に似ているのが気になって居た。似ていることを話すと、わざわざ抱いて連れて来てくれた。体は大きいし年齢は大分上ではあるが、やはり目つき、表情がそっくり。なんだか、わが家の猫に睨みつけられているような気持…

四迷の愛犬マル探し

休日に長男家族と多磨墓地、小平霊園へ墓参りにいった。道中、長男に「うちの猫がネコジャスリを気に入っている」と報告すると、あのプラスティック製のやすりは、猫のざらざらした舌を再現したものなので、猫は他の猫になめられているような気分になって気…

四迷に付いてきたノラ犬

日記や書簡を頼りに、二葉亭四迷の猫の情報をさらに得られないか、と思った。 猫でなく、犬が出て来た。 日付のない、伯父の後藤有常宛ての手紙の末に、発句が4つ添えられていて、 「愛犬を失ひて」と題して 「その声のどこやらにして風寒し」 と、失った愛…

園頼三が見つけた未乾の自画像

大正7年(1918)8月、列強はロシアの革命政府に武力干渉し、日本も米国とともにシベリアへ出兵し、シベリア経由で脱出を図るチェコ軍を救出するために赤軍と戦った。 国内では、シベリア出兵を見越して、投機目当ての米の買占めが発生した。米価が2倍…

銀猫と仔犬

高山寺のことを調べていると、近所の神護寺とともに京の山中の一寺院でありながら、12-13世紀の文化発信の重要な拠点だった、と思うようになった。 結論を急がず、一歩一歩進んでいくとー。 運慶の長男湛慶が高山寺の木彫を手掛けた嘉禄元年(1225…

仔犬と童子と湛慶と

高山寺の仔犬について調べるのに、なにから手を付けていいのやら。 栂尾の高山寺は、今は京都駅からJRバスで55分ほど。簡単に行けるようになった。昔は、高雄の神護寺の先にあるこの山寺は遠かったはずである。 大正11年に鉄道省が発行した「お寺まゐ…

西行の猫と明恵の仔犬

もう7年も前、私は、西行法師が71歳の時に17歳の明恵上人と会った、と軽率に書いた。これが怪しいことが、今回の銀猫探索で分かった。 2人が会ったことは、明恵の弟子喜海が書いた「明惠上人伝記」に記されている。そこで、確かめてみた。 西行は出て…

古本店の店仕舞い

本郷三丁目交差点にある古本店が、店仕舞いする。地下鉄で2駅、出かけてみると、おかみさんが坐っていて、あと1年頑張るといっていたんだけど、主人の体力がもうもたないと、4月で閉めることにきめた、といわれた。コロナとは無関係で、理由は高齢による…

隠し犬と袋猫

通勤中、停車したとある駅。ホームで、ジャンパーを着た中年女性がいて、懐からムク犬が顔を出していた。反対側の電車に乗るらしい。 コロナ騒ぎもあって、空いた下り電車なので、トラブルはなさそうだが、ペットは確か「容器に収納」が原則(手回り品切符を…

早朝散歩と「犬の樹」

運動不足になっているので、天気が良ければ午前6時前後、川沿いの道を隣駅近くまで歩いて、戻ってくる散歩をしている。親子、夫婦連れでジョギングする人も、結構多い。 川岸の桜並木は花が散ってしまったが、ハナミズキの並木は咲き誇っていて、目を楽しま…

明治34年の「考古界」

前に触れた明治時代の考古学、人類学の学者若林勝邦氏、坪井正五郎氏らの当時の活動ぶりを知りたくて、明治34年に発行された学術誌「考古界」を古本店から取り寄せた。 同誌は明治28年に設立された「考古学会」の機関誌。設立に奔走した若林氏、三宅米吉…

「犬猫人間」の装丁

長谷川如是閑にばかりとらわれていられないが、随筆集「犬猫人間」(改造社)の本の作りも変わっている。 手元に古本店から入手した大正13年の初版本があるが、表紙の題字が絵文字なのだ。函があったのかは不明だが、表紙は御覧の通りで、これだけ見たらタ…

スピッツ犬「シロ子嬢」を読む

猫をきっかけに、長谷川如是閑(1875-1969)の文章を少しばかり読んでみると、大変変わった人物であるように思えた。 1. 人間より犬が好きだと公言し続けていたこと。 2.「断じて行わず」をモットーに、決して行動の人とならなかったこと。 一…

描かれていたワーズワースの犬

英国ヴィクトリア朝を代表する動物画家がいて、湖水地方ヘルヴェリンの忠犬の絵を描いているのを知った。 その犬は前回推定したテリアではなかった。 画家はエドウィン・ランドシーア(1802-1873)というロンドン生まれで、トラファルガー広場のラ…

ワーズワースの忠犬に出くわした

英文学者の工藤好美さんを追いかけているうちに、英国ロマン主義文学のことも少し理解しないとならなくなった。 工藤さんは、昭和6年(1931)に「コウルリヂ研究」を上梓したが、コウルリッジはワーズワースの友人で知られるロマン主義の詩人。工藤さん…

野良猫、野良犬と山頭火の交流

青空文庫で、俳人の種田山頭火の日記に目を通すと、たくさん心惹かれるものと出くわした。 例えば、犬と猫との逸話。1940年10月11日に松山市の一草庵で57歳の生涯を終える前に、犬と猫が「一草庵日記」に登場する。ともに野良である。 10月2日…

カラフト犬の犬ゾリについて犬飼さんの記述

近所に住む、サングラス姿で派手な服装をする老齢の女性と知り合って、立ち話をするようになった。 ある時、おばあさんが樺太の落合生まれだと知った。珍しいので、「故郷に帰ってみたいですか」と聞いた。「すぐ北海道に移ったし、あまり思い出がないんです…

動物たちの立候補

今年11月の米カンザス州知事選に、6人の少年とともに、犬のアンガス(3歳)が立候補しようとしたとの報道があった。少年は認められたが、犬は選管からはねられた。SCHOOLBOYとある。米では、カンザス州のほか、ヴァーモント、マサチューセッツ…

ネモを通してフランス犬の命名について知ったこと

新しい猫の名前は、さんざん考えて、結局、前の猫の名前の一部をとって「ころりん」に決まった。命名は難しい。 フランス大統領マクロン夫妻は、就任後、慣例になっている大統領官邸の犬(ファースト・ドッグ)を、アニマル・レスキューセンターで選ぶことに…

犬の星に乗って

見上げれば、冬の夜空に青白く光るシリウス。 余すところ今年も10日となってしまった。 詩人の笹沢美明が12月のあとは13月が来るのだと思えばいい、という詩を書いていたと記憶する。でも、それは無理だ。 オリオン座の近く、全1等星のなかで最も明る…

続・ヘルマン邸のドイツ犬

ヘルマンばかりか当時アジアで暮らしていたドイツ人の多くが、ドイツ犬を飼っていたようだ。シーメンス事件が起きた大正3年(1914年)の夏、日本も第一次世界大戦に参戦。ドイツ、オーストリア、イタリアの三国同盟に宣戦布告した。 大戦勃発を機に英国…

六甲山麓のヘルマン邸とドイツ犬

友だちの歯科医に歯を治療をしてもらう。椅子が後ろに倒されると、腕が伸び縮みする照明機具が見える。機能的な無駄のないデザインの機器に前々から感心していた。 SIEMENSの文字。ドイツ・ミュンヘンの多国籍企業シーメンス製の医療機器らしい。 シ…

訂正:正倉院の猫犬薬は猛毒ヤカツだった

正倉院の「猫犬薬」は、薬でなくて猛毒だった。 先に、昭和23年発行の「正倉院文化」の古本を読んで、正倉院に「烏薬(ウヤク)」が収蔵されている、という記述に出くわしたことにふれた。ウヤクは、江戸時代に犬猫の薬として用いられたとも。 気になって…

正倉院の犬猫用漢方薬

年末は、テレビで探偵ものをよく見た。 劇中、毒殺シーンがあったが、定番の青酸カリ、トリカブト、ジギタリス(刑事コロンボに多い)、ふぐ毒とは違った毒が出て来た。 「科捜研」は、イチイの木の種。イチイは薬だが、種にはタキシンという猛毒が含まれる…

ビールを飲む犬だったか。「根府川へ」を読む

サランツエツエグさんのモンゴル語への翻訳がきっかけで、岡本敬三の「根府川へ」を読んだ。しんみりとした気持ちになった。終戦の日の前、モンゴル・ニュースのWEBにアップしたというのも、相当理解をしているのだな、と驚いた。 仕事を辞め、妻からも別…

本の背の動物、植物たち

やっと風邪から立ち直った。 ぼんやりと、本棚をながめて、動、植物を発見する。 NYの大手出版社のNORTONとKNOPFの本の背には、鳥と犬がいた。 KNOPFの巻尾の犬は、ボルゾイだった。ロシア帝国の貴族たちが好み、オオカミ狩りをした大型の…

カワセミを見て犬を思い浮かべる感覚

モンゴルのカワセミ。 モンゴルの青少年百科事典に描かれたカワセミ モンゴルでは、カワセミは、「犬」に関連付けて命名されている。HOXOЙ ΓAΛУУ(ノホイ ガロー)=犬の雁、犬のガチョウ、とか、HOXOЙ ШOΓШИΓ(ノホイ ショグシグ)=犬のショグシ…

イランの日本人妻とイスラム犬事情

イランで生活する日本人女性が、アパートから娘さんと犬の散歩に出るとき、住人のイラン男性からののしられる光景がテレビで放送された。 ぎょっとした。 犬を飼っていることを、怒っているのだ。敬虔なイスラム教徒の、犬嫌いは半端じゃない、と思った。と…