元日のテントウムシ

 年末から、私の部屋の天井にまるい虫がいたので気になっていたが、年を越してもまだ居て、座布団に止まったのを見てみると、季節外れのてんとう虫だった。
 元日にてんとう虫ー。
 
 イメージ 1
 
 年を取ってから、だんだんと好きになった高野素十の句を思い出して、あるいは新春にふさわしいかも知れないと思いなおした。
 昭和8年に留学先のドイツからホトトギスに投稿した、有名な句、
   
   翅わっててんとう虫の飛びいづる
 
  飛びいづる円く小さな昆虫に、私も新春の気持ちを託してみてもよかろうかと。
 元日のてんとう虫は、ななつぼしではなく4つ星。「テントウムシ 4紋型」というらしい(ななつぼしは、ナナホシテントウという)。ともに、春先からアリマキを食べる益虫だった。子供の頃、七星のてんとう虫以外はニセモノと思っていたが、そうではなかったようだ。
 
  むしろニセモノはてんとう虫に似て、ナス科の葉を食べる害虫の、テントウムシダマシ。ナナホシテントウによく似ている。
 
 実は高野素十は、昭和22年、敗戦後の新潟でこんなてんとう虫の句を作っていた。
 
  天道虫だましの中の天道虫
 
  テントウムシダマシだらけのなかにテントウムシが混じっていた、という写生句。
  あるいは、素十にとって、この天道虫や天道虫だましは、虫ではなくて人間だったかもしれない。天道虫だましが多くて、天道虫を見つけるのが稀だった人の世だったのだろう。
 
  17年の丁酉は、テントウムシダマシがくにの内外で多そうだが、この4星のテントウムシにささやかな希望を託してみよう。