山猫座と、どんぐりと山猫

 英南部デヴォン州のプリマス市近くの動物園から、山猫が脱走して、地元で大騒ぎしている、と英国メディアが伝えている。ケント州の動物園から移送した翌日、係員が逃走したことを発見。住民に危険を知らせ、罠を仕掛けたり、警察がヘリやドローンを飛ばして捜索している。 

 カルパチア山猫というユーラシア山猫の一種らしい。2歳で、FLAVIUという名前からオスだと思われる。

 
 山猫の特徴は―。
山猫は黄いろな陣羽織のようなものを着て緑いろの眼をまん円にして立っていました。やっぱり山猫の耳は、立って尖っているなと、一郎がおもいましたら、山猫はぴょこっとおじぎしました
 
 宮沢賢治「どんぐりと山猫」の表現のように、山猫は「立って尖っている」耳をもっているので、外見で猫との違いが、すぐわかる。
 
 賢治の童話の山猫は、どんぐりたちの言い分を裁定する裁判官だが、部下がいる。
あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。あした、めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。
とびどぐもたないでください
というはがきを、かねた一郎に書いて出した「馬車別当」だ。
 
 背が低く、革鞭を持ち、片目で、半纏の様なものを着ている特徴あるキャラクター。山猫と馬車別当の取り合せが童話を面白くしている。この組み合わせについては、なにか基にしたものがあるのだろうか。賢治の研究家はいっぱいいるから調べ上げているのかもしれない。
 
 私なりにちょっと思っていることがある。星座だ。山猫座はぎょしゃ座と隣り合っている。そう、山猫と馬車別当
 
イメージ 1
 
 星に詳しい賢治のことだから、連想したのではないか、と。こちらがぎょしゃ座=下図=。LE COCHER。
 背後に山猫座がある。
 
イメージ 2スラムスチード 天球圖譜」(恒星社、昭和18年)から。
 
 山猫座は1690年来、「天文学者ヘベリウスが、りょう犬、とかげ、小じし、小ぎつね、六分儀、たてなどという星座といっしょにつくったものだが、これといった神話伝説もなく、特別なみものもない」。
星図などをみると、胴体の長い、あまりすばしこそうなかんじのしないまぬけなネコの姿が書かれている。まったく話題にとぼしい星座である
草下英明氏はボロクソに言っている(「星座手帖」教養文庫)。
 
 可愛そうな山猫座。もし、隣りのぎょしゃ座とともに、2つの星座をヒントに、賢治が「どんぐりと山猫」のコンビを生み出したとしたら、山猫座を見直させることが出来るのだけれども。