西永福の友達の歯科医に寄ってから、府中市美術館に出かけた。立石鉄臣さんの展覧会。豊富な立石さんの世界が展開されていて、すばらしい内容だった。
1930-40年代、台湾で装幀や挿絵を手掛けた本や雑誌が展示されていたが、女子高校生が熱心にメモを取っていて、「どうして?」と、胸が熱くなった。中国語の新聞を持った男性が、やはり、1930年代の台湾の生活のスケッチを見て、ノートに書きこんでいた。昆虫図鑑の細密な原画は、親子連れが感心しながらのぞき込んでいた。
展覧会も終わりになって出かけたばちが当たって、展覧会のカタログは手に入らなかった。受付の女性に話を聞くと、「すいません。6月25日ごろには売り切れてしまいました」という。(府中の競馬場の人混みをさけて、伸ばし伸ばしにしたのがいけなかった)
立石さんのことを受け継ぐ若い美術家も出てきそうだな、とまたうれしくなる。立石さんは、台湾時代に人類学者の金関丈夫さん、考古学者の国分直一さん、編集者の池田敏雄さんという良き仲間を得て、美術の世界だけでない、台湾文化、民俗学、博物学の造詣を深めて、自分の世界を広げている。
自宅に戻って、大作「月に献ず」(1972)に描かれた、満月に捧げた貝を、細のコレクション棚から探し出してみた。あるある、左下の貝は違うかもしれないが、なんとか再現できた。
タケノコガイ科、クロミナシガイ、イトカケガイ科、ムカシタモトガイ、ホネガイ
画伯の好みだった昆虫たちについても、もっと知りたくなる。