正月の日経紙で見つけた鬼龍子の文字

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 湯島聖堂の鬼龍子について思いめぐらしていたら、1月3日付日経新聞に、塩見一仁さんが寄稿した「狛犬の歴史文献にみる」が掲載されていた。目を通すと、遼東半島の鬼龍子という文字がありびっくりした。
 
 同氏の近所の吹田市の伊射奈岐神社の狛犬は、カエルか怪獣のように愛嬌があるが、「日清戦争で日本が占領した遼東半島・金州城の望楼にあった魔よけの聖獣『鬼龍子』の姿を模して」明治36年に造立されたとかいてあったのだ。
  鬼龍子にもいろいろあるようなのだ。
 
 本棚の奥から、遼東半島金州城がある遼寧省の清代寺院についてかかれた論文のことをおもいだして、曹汛氏「朝陽佑順寺経閣考察報告」(遼海文物学刊、1987年)をさがしあてた。
 やはり、馬、獅子、獬豸(かいち)の鬼龍子のイラストが掲載してあった。鬼龍子といわず、「走獣」とある。今は、走獣で通っているようだ。
 
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 獬豸はなじみがない。「小学館・中日辞典」によると、獬豸は「伝説中のウシに似た動物で不正な人物を見分けて角で突くという」とイラスト入りででていた。
 
イメージ 3 朝陽寺の獬豸
 
 朝陽寺のと比べると、背中のコブ(というかヒレ)が5つあるのが違っていたが、あご髭の共通点がある。
 塩見さんの吹田市狛犬の片割れにもあご髭がある =新聞の写真右=。
 これも獬豸ではないか、とあたりをつけてみた。
 
 広辞苑に「獬豸」はないが、「鬼龍子」は載っている。「中国・朝鮮建築の降棟(くだりむね)に立てた、竜の子を模した瓦製の怪獣。走獣」。
 なるほどと思ったが、この説明、2つの点で違うように思う。
1)鬼龍子には馬、獅子、獬豸がある。ほかに、鳳凰、海豚(のような海獣)、騎乗する仙人と、たくさんの種類があり、竜の子だけでない。
2)中国、朝鮮ばかりか、モンゴルのラマ寺院の屋根にも、鬼龍子の装飾がある。
 
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ウランバートルで撮影したもの。たくさんの鬼龍子が屋根にいる。
 
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  湯島聖堂の屋根の上の左右にあった、鬼犾頭については、中国で「正吻」と呼んでいる。大きな口をあけた動物ということらしい。