読んでみると、明代の陶製の鬼龍子のみを紹介したものだった。20世紀の初頭、欧州では東洋の美術品がもてはやされたが、陶器の一つとして鬼龍子に目がつけられ、流出したようだ。著者のフックスも蒐集家だった。
目をひかれたのは、ウサギの鬼龍子があることだった。
どこの町の屋根を飾っていたかはしるされていない。
フックスは、この兎について、
「仮りに日本のものだとしたら、解釈ははなはだ簡単である。なぜなら、日本では白兎は皇后の紋章獣になっているからである。しかし、第四三図のものは中国産に違いなく、中国では兎には別の意味が与えられている。中国では、兎は月を代表する。したがって、鬼龍子になった兎は―その色が白いから―夜間その家を守護し、その家の平和に心を配っているというのである」
と、なにやら怪しげな知識でかいている。
守護獣としての兎は、日本では、住吉大社がしられる。何とも弱そうな兎も、頼りになるのか。
前々から気になっている台湾・台南の赤崁楼(Provintia、普羅民遮城)の兎の飾りもまた、守り神の役目があるのだろうか。
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兎といえば、最近、昔の俳句誌(昭和44年)で草村素子の句をみつけた。
瓶二つ白兎のごとし小正月
松の内もすぎ、忙しかった女性たちもほっと一息つく、1月15日の小正月。瓶は、びんではなくて、神棚におかれた瓶子(へいし)のことなのだろう。一服しながら、ああ、そういえば、兎に似ていると、女性の目で発見したのだろう。
たしかに兎のようでもある。兎は女性の守護獣なのか。