呉公とムカデにこだわって伎楽をしらべる

 飛鳥、奈良時代法隆寺東大寺で披露された仮面劇「伎楽」。
 
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呉公と酔胡従の面
 
 詳しい内容はわからず、正倉院に当時の伎楽面がつたえられている。
 
 うち、「呉公(ごこう)」の面には、岩群青=藍銅鉱などがぬられ、青あるいは緑の顔だった、と前にかいた。青、緑顔をした「呉公」は、呉の国の王とされるが謎めいている。
 というのも呉公に「虫偏」をつけると「蜈」「蚣」で、蜈蚣=ムカデになることだ。
 
 正倉院の呉公の面のうち、2面の顔料は岩群青と判明し、長門の長登銅山産出のものらしい。
 
 ところで、鉱山の世界でムカデという言葉は、「坑道」や「鉱脈」をあらわすもので、実はムカデと鉱山師とのつながりは深い。
  
 呉公、銅=青緑、ムカデは、深くつながっているのではないか。
 
 手はじめに、呉公のことをしりたくて、仕事の合間、神保町で「正倉院伎楽面の研究」(石田茂作、1955、美術出版社)を手にいれた。
 正倉院の伎楽面は164あったが、袋と面がばらばらにされていて、どれがなんの面なのか、わからなくなっていた。石田茂作氏と松島順正氏とで比定作業をおこなって、なんとか結果をだすまでにこぎつけた、ということがわかった。
 
 西大寺広隆寺観世音寺の資材帳も参考にしたようだが、資材帳によると、呉公の楽装束だけ他とちがっていることがわかる。
 
 袍の袖に、24条の虵舌(へびの舌)という三角状のヒラヒラ、
 裾には、26条の虵舌のヒラヒラをつけているという
 
 石田氏は、これをもって「堂々と着飾った貴公子」と表現するが、ヒラヒラこそムカデの足を形象化した装飾ではないのか、と思えてしまう。
  ややこしい話だが、やがてはモンゴルの仮面劇チャムにまで、つなげてみたい。
 
(続く)