魔鏡の新発見に感心したこと

 

 3Dで再現した古代の三角縁神獣鏡の鏡面に、日光を当てて、壁に反射させると、鏡の裏の神獣の文様が壁に映し出される。古代にも存在した「魔鏡」-。
 
  STAP細胞の世紀の発見で沸いた同じ日、古墳時代の青銅鏡に関しても大きな発表があった。
  遺物を工学的に研究してきた村上隆氏ならではの発見だ。
  鏡の厚さを極端に薄くして作る「魔鏡」の仕掛けは世界中にあり、日本では江戸時代に盛んだった。今回判明した古代の「魔鏡」は、三角縁神獣鏡の中で、鏡面が極端に薄いものだという。
 三角縁神獣鏡は、日本製か中国製かで議論が続き、一時は魏から卑弥呼に贈られた鏡との説が有力だった。三角縁神獣鏡」は、なにかと面白い。
 
 イメージ 1
 
  中国から、三角縁神獣鏡は出土していないが、「三角縁」の車馬神仙画像鏡=写真上=など、紹興附近から「三角縁」の銅鏡は多数出土している。(王士倫「浙江出土銅鏡」)
  これらも3D化して、検証して見れば、長い論争の終止符がうたれるかもしれない。
 
  これを機に、村上隆さんの著作「金・銀・銅の日本史」(2007岩波新書)を読んでみた。
  金属の分析から見えてくる古代の世界は新鮮で示唆に富んでいる。
  例えば、島根県の古墳出土の「金糸」。調査結果、金糸は、金の薄いリボンを螺旋状に撚った中空のパイプ構造だった。私が注目したのは、たった一五ミクロンの厚さの金の薄い板を幅三〇〇ミクロンのリボンにし、それを太さ一五〇ミクロンのパイプ状に撚る技術である」と書いている。
  古墳時代の金属加工の技術力の高さは、われわれの想像を超えていた。「魔鏡」も当時の技術力に支えられ、「偶然」でなく「意図」して作られたものなのだと思った。
 また、雅楽の楽器、笙のリードに用いられたり、金属鋺に使われる佐波理=サハリという青銅は、銅80%、スズ20%の合金であることが判ったという。銅8、スズ2の割合の青銅を、他の青銅と区別して、サハリと呼んでいたわけで、青銅合金の知識のレベルも高かったようだ。
 私がもっとも関心を持ったのは、7世紀末から8世紀初頭の青銅のうち、和銅開珎の初期のもの、富本銭小型仿製鏡のみが、アンチモンを含む異質の合金だったという発見だった。スズの代わりに毒性のまさるアンチモンを銅に混ぜる例は限られる。
 
1)「中央アジアから中近東の一部、特にハンガリー西部、カルパティア山脈周辺で出土した銅製品」。=銅-アンチモン系とともに、銅-アンチモン-スズ系もある=
 2)「紀元前二〇〇〇年頃のカフカスコーカサス)地域におけるカフカス・ブロンズ』」
=銅-アンチモンヒ素系とされる=
 
 藤原宮から平城京へ移る頃、日本の合金造幣技術が、遠く中近東、コーカサスハンガリーと繋がっていたというのは、想像を掻き立てられる。コーカサスといえば、「ソチ」のあたりではないか。