2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

高山彦九郎「京日記」から見えること

上皇さまが皇太子のころ、来日音楽家の御前演奏会の手伝いで東宮御所に入ったことがある。ガラス張りの広間で、指揮者の渡辺暁雄さんの司会者で、両陛下と数十人のお客さんが鑑賞するなごやかな会であった。 演奏後、歓談の場があって、招待を受けていた旧知…

秋里籬島と藤貞幹の密かな関係

江戸中後期に多くの名所図会を編輯した秋里籬島という人物も謎が多い。 藤川玲満氏の「秋里籬島と近世中後期の上方出版界」(14年、勉誠出版)を取り寄せた。同書によると、近年秋里の出自に関する史料が発見され、祖先は鳥取市にあった因州秋里城主に仕え…

ほろ苦い立原翠軒の上洛

ささやかな地異は そのかたみに 灰を降らした この村に ひとしきり 早逝した昭和の詩人立原道造の「はじめてのものに 」は、いまも出だしだけは覚えている。浅間山の小噴火で、ふもとの村に灰が降ったのを、こんな風に表現するのだった。 同じ学び舎で建築家…

不思議な鳥瓶子と貞幹

「都林泉名所図会」(寛政11年)で真葛が原の俳諧師西村定雅、富土卵の作品を取り上げた秋里籬島のことを前に書いたが、彼は好古家で考証学者の藤貞幹とも接点があった。 秋里は、安永9年「都名所図会」6巻を刊行し大ヒットを飛ばした人物。都の東西南北、…

那須國造碑と藤貞幹

江戸後期の京都の考証学者、藤貞幹のことを考えてみる。 彼の「好古小録」(寛政7年、1795)に掲載された「下野国那須郡那須国造碑」を眺めながら、どういう人物だったのだろうかと想像した。 この碑は、700年に亡くなった那須直韋提を子供たちが追…

シナモンが入っていた南蛮粽花入

10年前の誕生日祝いに、神保町の店で細に買ってもらった「南蛮・島物」の花入壺は机の上に置いてあるが、孫娘がやって来ると、クレヨンや色鉛筆を壺の中に詰めこむ悪戯をして遊んでいる。 頑丈なので、ちょっとのことでは壊れそうにないから、まあ許してい…

金印と藤貞幹の篆刻知識

江戸時代中、後期の京都の好古家であり、考証学の学者でもあった藤貞幹についても、金印偽作疑惑を調べてみることにした。 京都の佛光寺の塔頭久遠院に生れ一度は得度したが、18歳になって還俗した。仏教を嫌いその後「無佛斎」を名乗った。 自ら彫った「…