万里長城で思ったこと

イメージ 1
 
 数年前に、楽しみにしていた万里長城に上った。
 感想は、「作った方もたまらなかっただろうな、ふーっ」、だった。僕ら観光客は、深い谷を1人用リフトで上がったあと、屋根のないケーブルカーで急斜面を上がって行った。高所恐怖症の僕は、リフトの鉄パイプにしがみついて、震え上がってしまったし、鉄のロープで巻き上げる簡易ケーブルカーも怖かった。
 
 さすがに、長城の上を歩けば、景観はよかったが、おそらく、現場に居ない明代の官僚たちが、地図に一本の線を描いて、作れ、と命じたのだろう、と思った。
 
 中国に攻め入るモンゴルの騎馬軍が越えないように、高い防壁を造るのは分かるが、山の稜線に果てしなく長城を築くより、防壁も、重点的に絞ったほうが効率的だ、と思えたのだ。現場の声は、全く聞いていないな、と。
 
イメージ 2
  
 なにか似た思いをしたことがある、頭脳を巡らせたら、ソ連時代、イルクーツク郊外を小型バスで走った体験が甦った。車は、ジェットコースターのように坂を上がり、坂を下った。荷物は飛び上がり、頭を天井にぶつけそうになった。
 
 道は一直線。少しでも迂回をすればいいのに、地形の高低を考えずに一本の舗装道路が作られていたのだ。
はじめは、遊園地気分だったが、段々薄気味悪くなった。
 
 ソ連共産党の官僚がモスクワで、シベリアの地図に直線を描いて、道路を作れ、と命じたのだな、と感じた。作らされた方は大変だったろうなあ、流刑囚が作らされたのかなあと同情した。
 
 角川春樹事務所製作の「蒼き狼 地果て海尽きるまで」は、あまり面白くない作品だったが、新鮮な驚きは、万里長城に向って、騎馬兵たちが、中国に侵攻してゆこうとする場面だった。攻め込むモンゴル側から見た万里長城―。
 
 僕ら日本人も、知らず知らず万里長城は守るものと先入観念があったが、攻め込む側から描かれた長城を見て、「戦慄」が走った。
 
イメージ 3