エレメンタリーに出てきたコーラカル1

 新型コロナ蔓延のため、自宅でじっと過ごす。

 NYを舞台にシャーロック・ホームズと女性のワトソンが活躍する連続ドラマ「エレメンタリー7」の最新放送をWOWOWオンデマンドで見ることにした。

 合成オピオイドフェンタニル(「合成ヘロイン」)が殺害に使われた疑いで、ホームズたちは探ってゆく。やがて、フェンタニルから、ロシアで開発された化学兵器コーラカル1に行きつく、というすごい展開だった。
 この米国CBSの長寿ドラマは、コロンビアマフィアとのつながりなど、毎回我々のうかがい知れないNYの強烈な国際犯罪が描かれるのが人気の一つになっている。


 脚本で登場した、コーラカル1=KOLOKOL1は、実際にロシアで発生した2002年モスクワ劇場占拠事件で用いられた化学兵器なのだった。

 ロシア語でコーラカルは鐘のことだが、化学兵器になぜ、鐘の名がついたのか。

 

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 ラフマニノフに「KOЛOKOЛA(コーラカル)」(鐘、bell)という米のエドガー・アラン・ポーの詩を取り入れた1913年作曲の交響曲があるのをふと思い出して、ついでに聞きなおしてみた。

第一楽章 列をなす橇の鈴音 
第二楽章 結婚式の鐘 
第三楽章 警鐘 
第四楽章 葬送の鐘

 響く橇のベルは子供時代の「銀の鐘」、青春の絶頂の結婚を祝う「金の鐘」。そして、火事、騒乱を警告する壮年期の「銅の鐘」、最後は葬礼の「鉄の鐘」。4つの鐘を通して、人の一生を描くものだった。

化学兵器「コーラカル1」も同様に、「コーラカル4」まで作るつもりだったのか)

 聴いたLPは高円寺で手に入れた、ソ連時代にメロディアレーベルで発売されたもの。スヴェトラノフ指揮、ソ連交響楽団の演奏で、1980年モスクワ五輪を記念してリリースされたものだった。モスクワ五輪のマークが印刷されている。

 

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 1917年にソ連を離れて亡命、今米国の墓地で眠っているラフマニノフの「鐘」のレコードを、五輪のタイミングで出すことで、米ソ平和の象徴としたかったようだ。だが、御存じのように、79年のソ連のアフガン侵攻で、米国、日本ら自由主義諸国は五輪を集団ボイコット。社会主義諸国だけが参加する意味のない大会となった。

 気晴らしで見たはずのドラマが、化学兵器、鐘、五輪と深刻な話になってしまった。さながら、鐘に例えるなら、いま、世界は第三楽章の警告の鐘が鳴り響いている。