「赤いクワガタ」が京都、滋賀に出没したので、要注意という報道が流れた。
有毒の昆虫で、体液に触れると皮膚がただれるとのことだった。
クワガタが有毒というのは初めて聞いたので、違和感があったが、案の定、全くクワガタと関係のないツチハンミョウの一種だった。体長も2-3センチと小さい。
ツチハンミョウの怖さについては、前に触れたことがある。
☞ツチハンミョウは北米でも騒ぎになっていた
触って、ただれる以上に、誤って食べると大変なことになるようだ。
昆虫好きだから持っていたわけでなく、毒薬として。
当時欧米では、スペイン産のツチハンミョウを「スパニッシュ・フライ」と称して、媚薬として流通していたのだった。作家の谷崎潤一郎がこれを手に入れたのを、芥川が知って自分も欲しがったのだという。
芥川の親友の小穴隆一が医師から手渡されたものを、芥川に届けたのだった。
小穴は、晩年の芥川は、中国でピストルを手に入れたとか、まるで「自殺マニア」のような状態だった、と「二つの絵」で書いている。
「スパニッシュ・フライというのは谷崎潤一郎等も持っていて、当時割合に流行った媚薬であるが、分量を多くすれば媚薬的効果を超えて致死量となる。原料は蝿ではなく、ゲンセイというツチハンミョウの仲間の甲虫である。ゲンセイは体にカンタリジンという物質を含み、これを三匹分も服用すれば死ねるのである。ただし、腎臓がただれて七転八倒の末に」
と、ツチハンミョウの怖ろしさを、奥本さんは説明している。
今回も、「赤いクワガタ」などと報道せず、ツチハンミョウのことを正確に伝えるべきだと思う。