話題は蝶からハヤブサに

 久しぶりにスチュワートさんと会う。やっと、昆虫採集のことを聞く。
「英国でも小さなこどもたちはやってますよ」という。
「じゃあ、スチュワートさんは?」
「やったことないです」
「そういえば、一昨日、近所の河川敷で先生に連れられ幼稚園児が、みな網(捕虫網)をもって楽しそうに歩いていましたね」
「英国でも見る光景ですか?」
「見ないですね」
「やはり、少し違うのかなあ、蝶への感じ方とか。英国を代表する蝶とかあるんですか?」
「うーん、よくわからないですね」
 
 結局よくわからないまま、ビールを飲んで違う話に移ってしまった。
 
 ビール党のスチュワートさんが好きなベルギービールだ。今回は初顔で、「デュシェス・ド・ブルゴーニュ」。発酵の後、オーク樽で何か月も熟成させるので、ワインのように酸味と果実のような味わいがある。
 
 ラベルは、鷹を手にしている貴婦人の絵。
 
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 スマートホンで調べると、貴婦人は、マリー・ド・ブルゴーニュ(1457-1482)というブルゴーニュ公シャルルの一人娘だった。
 その時代、フランス東部からドイツ西部にかけて、ブリュゴーニュ公国があったのだった。
 美しい姫と言われたマリーは、父の跡を継いで国を治めたが、鷹狩を好み、誘われて出かけた狩りの最中に落馬して背骨を折り、数週間後に25歳の若さで亡くなってしまった。それで、小さなハヤブサを手に止めた姿が描かれ、ビールのラベルにも用いられたらしい。
 
「それにしても、小さなハヤブサですね」とスチュワートさん。
ハヤブサではなさそうですね」
「マーリン(コチョウゲンボウ)ではないですか」
「そう、マーリンですね」
 
 中世の鷹狩では、貴婦人たちは、マーリンを選んで用いていたようだから、一応マーリンであると結論を出した。
 
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 それにしても、ヨーロッパなのに、なぜ左手でなくて、鷹を右手に止めているのか。この絵には不可解な点もある。それは、おいおい検討することにして、また次の話題に移ってしまった。