今年の初蝶は、クロアゲハだった。長年生きてきたが、初めてのことだ。
その年はじめてみる蝶は、たいていモンシロチョウだった。理由は単純で、アブラナで幼虫が成長するので、春先にいち早く孵化したのだ。なにしろ都内でも沢山飛んでいた。モンキチョウは少し遅かった気がする。マメ科を食草とするからだろう。
だから、高浜虚子の初蝶の句
初蝶来何色と問ふ黄と答ふ
は、少し技巧的すぎると思ったものだ。
それが、クロアゲハ…。温暖化のため、クロアゲハの幼虫が好きな、カラタチ、サンショウ、ミカンと柑橘類の成長が早くなっているからなのだろうか。心配になる。
初蝶を見た翌日、アゲハチョウを見た。GWの谷間の今日、駿河台下で今日また2度目のクロアゲハを見た。クロアゲハ、あわよくばカラスアゲハをと、捕虫網を手に汗だくになって追いかけた夏休みが懐かしい。真夏の蝶だったのだ。
5月にアゲハたちが多数飛んでいるニホンは、もうかつてのニホンではないのだ、とつくづく思う。
モンシロチョウは見ていない。今年の初蝶はクロアゲハだったのではなく、今年は初蝶を見なかった、と解釈すればいいのか。