王子稲荷の火焔宝珠で思い出したこと

 モンゴルをはじめて訪問したとき、ウランバートルの博物館の仏画に圧倒された。僕は、どうでもいいような細部に目が行ってしまうので、ほとんどの仏画に描かれている、丸っこい実のようなものが気になった。
 
「あれはなんですか?」 と、モンゴル人にきいたところ、「チャンダマニ」とおしえてくれた。早速手帳にメモした。
 
 チャンドマニともいわれるらしい。願いがかなう宝物、ということだった。
 
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 帰国すると、なんてことはない、日本の寺院のあちこちにあることがわかった。僕は「如意珠」とおもったが、「宝珠」と訳されて、それこそ、日本武道館の屋根の上にものっていた。
 
 先だって、東京北区の王子界隈をあるき、坂をのぼって、王子稲荷に横っちょから入ると、稲荷社独特の「火焔宝珠」にでくわした。石彫やらに沢山あって、形がにているので、モンゴルのチャンダマニを思いだしたのだ。
 
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 しかし、王子稲荷では、この宝珠より、キツネの図像がしたしまれて、近所では、キツネの顔の焼き印のついた「きつねの酒饅頭」が名物として売られていた。
 
 なんでこんなことが気になるかというと、京都では冬になると、火焔宝珠の焼き印がついた「お焚き饅頭」がいっせいに店頭で売られるからだ。
 
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 10月から12月にかけて、京都では、伏見稲荷貴船神社などたくさんの寺社で「お焚き祭り」という火の祭りが行われ、祭りの後に、この饅頭が配られてきた。宝珠を体内にとりこめば、御利益があるということらしい。今では季節の風物詩のようになって、京都の菓子店で、火焔宝珠の饅頭が売られている。
 
 火焔宝珠にも、京と東京であつかいに差があるということなのか。