熊が歌った「本当になくてはならないもの」

  大分前になるが、コロナ流行のさなか、英国のラジオタイムズ誌がディズニーアニメに関するアンケート調査をした。英国人に影響を与えたディズニーアニメのことが伺えて興味深かった。

 「The biggest tearjerker」もっとも涙を誘った作品は「バンビ」。これは、日本でもそんなに違わないだろう。

 

 「Uplifting song」元気にしてくれる歌は、少し意外だった。

  67年公開「ジャングル・ブック」の「ザ・ベアー・ネセシティ」(the bare necessity)だった。米ペンシルベニア生まれのフォーク歌手ギルキソンが作詞作曲をしたデキシーミュージック。

 

 オオカミの家族と暮らす人間の子供モーグリに、教育役の熊のバルーが、生きるヒントを軽快に歌って聞かせる。

生きる上で、なくてはならないものを探しなさい。なくてはならない単純なものを。心配事、いさかい事なんて忘れちゃいな」

「絶対なくてはならないものだけが、大事なのさ」

 

 英国人の多くが、熊のバルーの楽観的な歌に励まされてきたのだった。

 

「I mean the bare necessities、that’s why a bear can rest at ease」

 熊が気楽に生きてこられたのは、そんな生き方をしてきたからだと、バルーは教えている。

 

 

 翻って、日本で最近、北陸のスーパーに子熊が逃げて立てこもったニュースや、撃ち殺されるニュースをよく聞くようになった。熊の現実とアニメや歌の世界の落差を考えさせられてしまうのだ。ちなみに、英国に野生の熊は生息していない。1500年前に、絶滅してしまったそうだ。