休日、盆栽村の大盆栽まつりの帰り、大宮公園へ寄って池畔のベンチで一休みした。一羽の鵜が飛来して目の前で潜水した。鵜は潜ったままなかなか水面に出てこない、目を凝らしていると、はるか向こうで浮き上がった。
小さなカイツブリも1羽居て、目の前で頻繁に潜っていた。カイツブリは鵜ほどではないが時間をかけて潜水し、潜った地点から遠くない所で浮上していた。
カイツブリは古来「息長鳥」といわれてきたが、鵜の方がずっと息長鳥だなと思った。長時間潜水するので、息長鳥。ただし読み方は「シナガドリ」。
kiは、hiと混同するから、キナガがヒナガとなり、やがてシナガになったと考えられる。(江戸っ子が東をシガシというように)
息長鳥(シナガドリ)は、万葉集に登場する。枕詞で用いられているのだ。しかも、2種類ある。
1)は、アワに掛かる。アワは泡だろう。カイツブリが潜水するとき、泡が立つ。
2)は、イナに掛かる。猪名という地名に。
しなが鳥 猪名野に来れば 有馬山 夕霧立ちぬ 宿りはなくて (巻7)
どうして、猪名にかかるのか。百人一首の次の歌が参考になる。
有馬山 いなの笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
心変わりを問い詰められた大弐三位が、決してあなたを忘れていませんよ、と歌った内容で、有馬山と猪名の笹原を出して、心変わりは「ありま」せん、あなたのことは忘れては「いな」いよ、とシャレている。
上記の両歌とも有馬と猪名がセット。ある、と、ない(いな=否)と。
潜って、姿を消してしまう、水中にいなくなってしまうから、しなが鳥は、いなに掛かるようになったと考えられる。