およぐ猫は確かにいた。
伝説のおよぐ猫、水車屋の猫=ミラーズ・キャットを、英国人もまた、長い間、さがしつづけていたようだ。
1955年、英国の愛猫家は、東トルコのヴァン湖畔で、水遊びをする猫を発見した。
耳の周辺と、尻尾だけに色がついている特徴ある白猫。塩湖であるヴァン湖で、水浴びしたり、泳いだりしていた。
「ターキッシュ・ヴァン」という名で呼ばれ、広大なヴァン湖の周辺が「原産地」らしい。
水をおそれない、猫の常識をやぶる、「希少種」だ。
英国人は、2匹を母国へ持ち帰った。やがて、米国にもわたり、計画的な繁殖がなされている。猫好きには、有名な話なのかもしれない。
塩湖のヴァン湖には、インジ・ケファルという、ニシンの仲間の魚がいるそうだが、ターキッシュ・ヴァンは、湖畔の浅いところで泳ぐのに手一杯、食い気にまで、頭がまわらない様子だ。
東トルコのこのあたりは、古代ウラルトゥの首都があり、中世には、ビザンチン帝国とセルジュク・トルコとが、せめぎあった。
そもそも、この地域で自然にそだった猫だったのか、あるいは、古代、中世と、ここで花ひらいた文化が、ユニークな猫にそだてあげたのか。
トルコには、前に紹介したように、猟犬の元祖、ターキッシュ・イエロー・ドッグがいた。
興味はつきない。