ウラルトゥ湖底遺跡と猫のヴァン

 泳ぐ猫、ヴァンが暮らしていたトルコのヴァン湖の水中で城壁が見つかったと話題になっている。
 紀元前9世紀から紀元前6世紀に繁栄していたウラルトゥ王国のものとされ、1キロに亘り続いているのが確認された。150m位水位が低かった当時に建設され、その後水没したものと推定された。今後考古学者が参加して本格的な調査が始まる。
 
 現在のヴァン湖の領域はトルコだが、ウラルトゥは、アルメニア人の先祖が建国したとされる。ヴァン(VAN)は、古代のアルメニア語で「都市(TOWN)」を意味するのだという。アルメニアにも似た名前の「セヴァン湖(LAKE SEVAN)」がある。
 
 猫のヴァンの源流は、中世に遡るとされているが、今回の発見で、3000年近く前のウラルトゥ王国まで遡るのではないか、と想像してみたくなる。
 猫には、ヴァン・パターンとよばれる模様がある。全身白く、耳のまわりと尻尾にだけ、同じ色がついているものだ。ヴァン湖のある東アナトリアばかりか、地中海沿岸、中近東にもヴァン・パターンの猫が存在するという。他の同パターンの猫と異なる、ヴァンの最大の特徴は、泳ぐのが好きなことだ。
 
 どうして、ヴァンが泳ぎ好きになったのか。湖畔で暮らした猫だったことが大きいのだろうが、湖畔で暮らす猫が、みな泳ぎ好きになるとはいえない。特別な理由があったのだろう。
 今年、ウラルトゥの城が湖面に沈んだことを示す水中城壁が発見されたことで、都市の水没と、泳ぐ猫が結びつかないだろうか。
 
 英国人が1950年代にヴァン湖畔で泳ぐ猫を発見してびっくりして持ち帰り、いまでは世界で知られるようになった猫のヴァン。
 
 ヴァン湖は、アルカリ性の水質のため、損耗を逃れて、鮮明な城壁が残ったと報じられた。ならば、今後の湖底の遺跡調査で、猫関連の遺物が発見されるのも、全くの夢物語ではなさそうだ。ヴァンのルーツ探しは、興味深い。

 

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    上の図は、ウラルトゥのルサⅡ世がスタンプ印章に用いた意匠。イランのパスタム遺跡で出土した。犬のような、動物のハイブリッドのような。猫とは言いないのが残念。