内田吟風の古本蔵書印の謎がとけた

 何十年も前の夏に、甲子園球場にかよっていたことがある。
 しかし、高校球児の熱気にあてられて、つかれてしまうことがあり、大阪の阪急古書のまち、に立ち寄って、つかの間自分の時間をとりもどし、ホッとした経験がある。
 その時、買った本が本棚にある。
 内田吟風「古代の蒙古」(昭和15年、冨山房発行)で、1円20銭の定価がついている。
 
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 本には、こんな蔵書印があった。
 
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 満鉄の案内所のものらしいが、なぜ小樽なのか、よくわからないままでいた。
 貴志俊彦満州国のビジュアル・メディア」(吉川弘文館、2010年)を手にして分かった。「満鉄小樽鮮満支案内所」は、文字通り北海道・小樽にあった満鉄の案内所のことだった。
 
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 満鉄の鮮満支案内所の当時のポスター=写真上=をみると、東京、大阪、名古屋、敦賀、門司、下関、長崎、新潟、小樽と9都市にあったことが分かる。
 同書によると、まず1925年に東京丸の内ビル、大阪堺筋、下関駅前の3ヶ所に「鮮満案内所」として設置されて、案内事務、物産販売をした。1931年の満州事変勃発後は、時局講演会に講師を派遣したり、記録フィルムの貸与をしたり、内地で満州での活動のPRをしたのだという。半島、大陸への旅行の手配は、案内所にあったJTBが行ったそうだ。
 1939年に東京、大阪、門司、新潟の鮮満案内所を 鮮満支案内所と改称し、小樽に案内所、敦賀、長崎に出張所を新設し、各案内所は東京支社直属とした。 
 
 というわけで、この本は小樽に設置された満鉄のアンテナショップに置かれていたものだと分かった。