ゲノムでわかった亀を幻想する

  理化学研が、亀のゲノムをしらべたら、トカゲ、ヘビより、ワニ、トリ、恐竜に近い「進化的起源」をもつことがわかった、そうだ。 また、ハ虫類では初めて、哺乳類に匹敵する臭い受容体を多数もつことを発見したとも。
 理系の用語は、まどろっこしいが、亀は臭いに敏感、「鼻がきく」ということらしい。
  
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  すぐ、韓国、新羅時代の亀の石像をおもいだした。 亀の鼻の穴の表現が生々しく、写真におさめたのだ。
 韓国の慶州にある武烈王陵の亀趺(きふ)。
 
 7世紀新羅の「彫刻家」はゲノムの分析をまつまでもなく、 敏感な亀の鼻をわかっていたようではないか。 亀は、面白い。
 
 WORLD TURTLE=世界亀といって、世界各処で、亀が世界をささえているという神話、伝承がある。 古代印度では亀の王が山をささえる説話、 ネイティブ・アメリカンにも、大地を背おう亀がうごいて地震がおきるという説話がある。
  中国にも同様の説話があり、さらに亀はあつまって橋をつくる、という興味深い説話もある。 中国「魏書・高句麗伝」「拾遺記」にしるされているという(出石誠彦氏「支那神話伝説の研究」)。
  
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 台湾の台南には、清の時代の亀趺がズラリならんでいて、これなら甲羅をふんで、橋のように海をわたることができるか、とおもう。
  
 さて、わが国。因幡の白兎が、海をわたるため、「ワニ(海和邇)」をだまして整列させて隠岐から因幡までやってきて、皮をはぎとられる話があった。 大半の「古事記」の訳では、ワニが「フカ」になっている。 つるつるすべりそうな、フカの背中をあるいてわたるイメージが、どうしてもわかない。
 
 亀が橋をつくる説話をおもいいたせば、ワニは、フカではなくて亀である方が理解しやすい。ただ、亀がなぜ、ワニになったかはわからない。 亀はワニの仲間にちかいというゲノムのことを、古代人はしっているはずもなかろうし。
 
 因幡の白兎の話が、もうひとつの「兎と亀」の話だったら、とても面白い。