噴火のニュースと水沢うどん

 ハワイ島キラウエア火山の噴火や地震のニュースが続いている。マグマが道路の裂け目から噴出している映像に驚いた。同じ噴火でも恐怖のあり方が違う。飛騨の御嶽山草津本白根山の噴火では、火山弾が飛んでくる恐怖感を映像が伝えた。
 
 黄金週間のある夜、天ぷらを揚げて、知人が送ってくれた伊香保水沢うどんを食べながら、ハワイ島のニュースを見、水沢うどん産地近くにある榛名山のことを思い出した。
 榛名山・二ツ岳噴火のことだ。1500年も前の、6世紀の噴火で古墳時代のムラが埋まり(黒井峯遺跡)、火砕流を前に鎧を着た男性が両膝つき、うつ伏せになったまま発掘された(金井東裏遺跡)。黒井峯は日本のポンペイ遺跡といわれている。
 
 WEBで気象庁の発表資料をみるとー
 榛名山は、400-550年の間に起きた二ツ岳の3度の噴火が記されていた。ムラをうずめたのは、525-550年の間の何れかの年の初夏に発生した大規模マグマ噴火ということになる。
「二ッ岳伊香保噴火:火砕物降下・火砕流溶岩ドーム、泥流。噴火場所は二ツ岳火口。プリニー型噴火による降下軽石火砕流と二ツ岳溶岩ドームの生成。マグマ噴出量は0.74 DREkm3(VEI5)火砕物降下、火砕流が溶岩ドームを生成、あるいは泥流となった」とある。
 
 プリニー型噴火とは、紀元79年ローマの博物学者大プリニウスが遭遇して死亡し、甥の小プリニウスが記録を残したヴェスヴィオ火山の噴火形態。プリニウスからプリニー型の名がついたという。ブリニー型は、軽石、火山灰を放出する大規模な爆発的噴火で、広範囲に噴出物が堆積し、火砕流が伴うこともあるという。実際二ツ岳伊香保噴火では火砕流もあったわけだ。黒井峯、金井東裏両遺跡のムラでは、火山弾、火山岩が絶え間なく飛んできたと推定できる。
 
 2012年、金井東裏遺跡の発掘にあたった群馬県埋蔵文化財調査事業団は、鎧姿の男性について、「山の神の怒りを鎮める儀式をしていたのではないか」と解釈した。
 
 火砕流を前に、鎧を着て、儀式? ひっかかるものがあった。
 
 その後、御岳、本白根山の被弾の悲劇を見て、噴火の恐ろしさを実感するようになった。今ならだれでも、常識的にはこう解釈するだろう。男性は、鎧を着て、火山弾を防ごうとした。鎧は、鉄の札甲で覆われているから。近くには乳児の頭骨も出土している。父親が鎧を着て、子どもを守ろうとして力尽きたのだろう。
 
 古代というとすぐ宗教儀礼に結びつける傾向は、あぶない。