不作のタケノコと美食のイノシシ

 タケノコは日本全国で豊作だったと思い込んでいたら、そうでなかったことが、連休の一日、房総をドライブしてわかった。昼食で入った外房・長南町蕎麦屋の主人が、あんまり地元の野菜の自慢をするので、
「ことしはタケノコも豊作だったでしょう」と聞いたところ、
「ぜんぜんダメ、全くダメ」と意外な答が返ってきた。
「ここらのタケノコは、山から下りてきたイノシシに全て食われてしまいましたよ」

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  イノシシが犯人だったか。話を聞いていくと、そうでないらしい。
「去年の台風のせいですよ」
 もう忘れかけてしまったが、昨年10月下旬、観測史上3番目に上陸が遅かった超大型の台風21号が関東を襲った。千葉県外房では、台風が海水を大量に巻き上げて野山に広範囲に吹き付け、農作物、木々に莫大な塩害をもたらした。
「道の途中で、山を見て気づいたでしょう。竹の葉が黄色く変色しています」竹がやられた後遺症で、タケノコが不作だったのだった。
 
 イノシシも例年山林で食べるタケノコが少ないので、里に下りてきてモグモグ。
「人間よりタケノコの味を知っていて、まだ地面に顔を出すか出さないかのものだけを掘り出して先に食べてしまうんです」
「柔らかいということ?」
「いや、味がエグクないんですよ」と美食家のイノシシの話になった。
 
 主人は、私がなにも容器を用意していないのに驚いて、ちゃんと水を汲んで帰るようにと、大型のペットボトルを黙って差し出した。すぐ近くに名水百選の「熊野(ゆや)の清水」があるのだった。沸き水の量は豊かで、ペットボトルはあっという間に満タンとなった。
 
 帰宅して珈琲を入れると、名水の力で、触感がつるっと変わったような感じがしたが、もっともっと違いが分かるために、イノシシの舌がほしいと思った。

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 ドライブの目的は、四方懸造の笠森寺の観音堂だったが