因幡の茶うさぎ

 同僚の鳥取出張が連続したせいで、ウサギの菓子の土産が続いた。因幡の白うさぎ〔米子市〕を象った饅頭、焼き菓子。うさぎが描かれた、とっとりせんべい〔鳥取市〕。ウサギが鳥取のPRキャラクターになっているのに気付いた。
 
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 白うさぎの饅頭、焼き菓子など全て、色は茶。前々からの疑問がふとよぎる― 本当に白い兎だったのか、因幡の兎は?

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 そもそも日本列島に住みついたウサギは、ニホンノウサギ〔日本野兎〕。色は茶色。古事記に描かれる、鰐(わに、わにざめ説もある)をだまして、島から海を渡ったウサギは、元気な日本の野うさぎだったと考えるのが、普通だろう。
 
 鰐を怒らせ、赤裸にされたウサギは、通りがかった八十神から、海水を浴びて肌を風にさらしなさいと指示され、その通りにして痛みは増すばかり。大穴牟遅(大国主)はウサギに、真水で洗ってから、薬草でもある蒲の穂を敷き散らして、蒲黄の上で、転げまわりなさいと処方を教え、結果、「その身 元の如くなりき」(元通りになった)。
 
 蒲黄の色は黄~茶。茶系のウサギに戻ったことになる。
 
 白兎については、雪国に棲息するニホンノウサギの中には冬毛が白く生えかわるものがあると、説明する人もいる。アルビノだったという説も。
 
こういうときは、原典にあたるしかない。白うさぎは、「素兎」と表記され、シロウサギと読まれていた。
素人(シロウト)のシロ。素は、素飯、素裸、素踊、素顔のスでもある。素は、生地のまま、装わずそのままの意味だ。そもそも素は、白を指すのではなく、染まる前の生地のままの白色ということで理解できる。素=はだか。220年前に本居宣長が「素兎」は裸の兎であって、白兎ではないと見解を出しているのを知った。
 
 地元の人たちも気づいているのかもしれない。鳥取土産を見て、ぼんやりと思った。